自動車の保有台数は2006年度まで上昇し続け7924万台にまで達したが、08年のリーマンショックによる経済危機の影響もあって10年に7866万台に減少した。ただ、その後はハイブリッド車(HV)、軽自動車、コンパクトカーなどの新車販売が好調に推移し、17年には過去最高の8156万台にまで拡大した。一方で、高齢化社会の本格到来による現役ドライバーの減少、少子化に加え、若年層のクルマ離れ、レンタカーやカーシェアリングの普及など、消費者の意識が「保有」から「利用」へと変化していることなどによって「保有台数が今後、かつてのような右肩上がりの成長路線を維持する要素は少ない」(白書)と、先細りを予想する。 これら車を取り巻く構造変化によって大きな影響を受けると予想されるのが継続検査台数だ。ここ6年間は、ほぼ3200万台前後で推移しているが、17年度は前年度比50万8千台減の3248万6千台と、3年ぶりに減少に転じた。主な要因として白書は「14年の消費増税により新車販売台数が減少したため、乗用車の初回車検台数が減少した」と分析する。
車種別では登録車が同73万3千台減(3.4%減)の2061万3千台と落ち込んだのに対して、軽自動車は同22万5千台増(1.9%増)の1187万3千台と増えた。個人向けリースとしても人気の軽自動車の需要拡大が改めて明らかになった。しかし「保有」から「利用」へのトレンドが今後も進行していくことから「(全体の)継続検査台数は減少していく」(白書)と予想している。
一方、整備業界にとってプラスの要因となりうる動きもある。登録車の車齢別保有台数は、17年度に「5年以上9年未満」と「13年以上」の二つのカテゴリーで前年度と比べてそれぞれ0.9%増、0.8%増と増加傾向。また、車齢9年以上の割合が全体の4割強となった。クルマの品質・性能が向上していることに加え、消費者の節約志向も背景にあり、これらの使用年数の長期化は入庫やメンテナンス回数の増加につながる。このため、低年式車ユーザーとの関係強化を進めることが整備事業者にとっても重要になる。
新車では、インターネットなどで外部とつながる「コネクテッドカー」が本格的に普及していく見通しだ。商用車ではすでに通信を使った入庫予約の受付や、車載データから作業計画を事前に策定するなど、ディーラー整備工場がスムーズに作業するのにコネクテッドサービスが活用されている。これらを利用したアフターサービス体制の構築が今後、本格化する見通しだ。白書ではコネクテッドカーの普及は「故障を未然に防ぐことで故障件数が減少し、臨時整備による入庫台数が減少する」「一般整備の入庫先としてディーラーが選ばれやすくなる結果、ディーラー以外の整備業者への入庫台数が減少する」と二つの可能性を示している。
また、整備工場では先進運転支援システム(ADAS)のエーミング(機能調整)など、最新技術に対応する設備投資も求められている。自動車を取り巻く環境が大きく変化する中、整備業界も数多くの課題を抱えるが「地域を支えるカードクターとして、事業者には将来に向けた経営基盤の確立に向けた適切な事業運営を求める」と白書では訴えている。=おわり=(この連載は村上瞳が担当しました)
※日刊自動車新聞2019年(平成31年)4月23日号より