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自動車業界トピックス

脱炭素に向けた動き本格化

連載「混沌 押し寄せる“CASE”の波」①自動車メーカー

  自動車産業全体にCASE(コネクテッド、自動運転、シェアリング、電動化)の波が押し寄せる中、自動車メーカーの再編が相次いでいる。直近では1月にグループPSAとフィアット・クライスラー・オートモビルズ(FCA)が経営統合して世界4位となるステランティスが発足した。国内では、トヨタ自動車といすゞ自動車が資本提携で合意、トヨタ子会社の日野自動車を含めて商用車のCASE対応で協力する。コロナ禍による先行きの見通しが不透明な中、脱炭素社会に向けた動きも本格化し、自動車産業を取り巻く環境は大きく変化している。自動車各社は生き残りをかけて仲間づくりを急ぐ。

日系メーカーを中心とした自動車メーカー相関図

「もっといいモビリティ社会をつくるためには、競争だけではなく、協調していくことがますます大切になる」(トヨタ・豊田章男社長)。協業を継続的に広げているのがトヨタだ。2018年に資本提携を解消したいすゞと再び提携するのは、輸送業界全体が協力してカーボンニュートラルに取り組まなければならないという危機感からだ。

UDトラックスを買収したいすゞと日野を合計した国内商用車シェアは8割に達する。いすゞと日野はライバル同士だが、トヨタが間に立つことで、直面する物流問題の解決に向けて協力する。

トヨタは本業である乗用車でも勢力図を広げている。19年8月にはスズキと相互出資に合意、同年9月にはスバルへの出資比率を引き上げるとともに、スバルもトヨタへ出資することで合意した。17年に資本提携したマツダと、完全子会社のダイハツ工業を含めると、日系乗用車メーカー8社のうち、5社と資本提携している。シナジーを具体化する動きとして次世代の車載通信機の仕様を共通化することで合意した。

トヨタ、日野と提携で合意したいすゞは、燃料電池(FC)技術でホンダ、電動車や自動運転などの領域ではボルボ(ボルボ・トラック)と提携している。一方の日野はフォルクスワーゲングループのトレイトン、BYDとそれぞれ電動トラック分野などで協業している。日野とトヨタの協業は小・中型トラックが中心となるため、いすゞ、日野それぞれ他のアライアンスとは協業領域が重複しないとする。得意とする地域や車種が異なる中、複数の自動車メーカーとの協業で全方位でCASEによる自動車革命に備える。

海外に目を向けると、1月に発足したステランティスは経営統合によってCASE関連の開発の効率化を見込んでおり、特に電動化戦略を加速する。日本電産との合弁会社で22年末からモーターの生産を開始するほか、エネルギー会社と合弁で車載用電池の開発・生産にも乗り出すなど、電動化対応を本格化している。ただ、欧州、北米が地盤なため、中国やアジアといった成長市場での存在感の低さが課題となる。

拡大路線に走ってきた反動で経営悪化に陥ったルノー・日産自動車・三菱自動車の3社連合は、それぞれの中期経営計画でアライアンスを生かした「選択と集中」に転換、収益重視に舵を切った。経営再建を進めるルノーは3月、保有していたダイムラーの株式をすべて売却し、資本提携を解消した。ダイムラーと相互出資して、メキシコに合弁工場を持つ日産の今後の動向が注目される。

※日刊自動車新聞2021年(令和3年)5月1日号より