国内の自動車メーカーが、電気自動車(EV)の投入拡大に合わせて、混流生産の効率化を進めている。三菱自動車は軽EVの生産開始に合わせて水島製作所(岡山県倉敷市)に電池パックの一貫生産体制を構築するとともに、混流生産工程をEVの生産台数拡大に応じて最適化した。日産自動車やマツダもEVを製造できる新しい混流生産ラインの稼働を開始した。海外メーカーはEV専用工場への投資を積極化しているものの、足元ではハイブリッド車(HV)の需要も根強く、当面はEV市場の成長スピードが読みにくい。日本メーカーは混流生産を軸に生産技術を磨き、最小限の設備投資で効率的に電動化シフトを進める考えだ。
三菱自は20日、水島製作所で新型軽EVの生産を開始した。同工場では2009年から「i─MiEV(アイ・ミーブ)」をガソリン車と混流で生産していたが、約80億円を投じてEVの生産体制を再構築した。大きな変更点は電池パックのプレスや検査工程の内製化だ。従来は電池パックの組み立てのみを内製していたが、生産台数が拡大するためにパックを一貫生産できるようにし、物流費の低減を図った。
EVとガソリン車を混流生産する完成車組み立てラインは、「安く作るために既存のアセットを活用する」(加藤隆雄社長)と既存の生産ラインを最大限生かした上で生産台数の拡大に応じて人員配置やプロセスを見直した。アイ・ミーブでは10~20台に1台のペースでEVを生産する設計だったが、新型軽EVは最大で4台に1台のペースで生産できるように設計したという。
海外ではフォルクスワーゲン(VW)やゼネラル・モーターズ(GM)など各社がEV専用工場への投資を進めているものの、日本メーカーは混流生産を軸に生産体制の構築を進めている。三菱自のほか、日産は栃木工場(栃木県上三川町)でパワートレイン、駆動方式が異なる27種類のモデルを同じラインで生産するシステムを導入。マツダは複数の自動搬送機(AGV)を活用して多様なモデルを生産する仕組みを山口県の防府第2工場(防府市)で採用した。
スバルは、今月12日に国内にEV専用工場を新設する計画を発表したが、中村知美社長は、過渡期においては需要に応じた生産体制の柔軟性を重視する必要性を強調する。市場拡大が急速に進めば海外勢から後れをとるリスクもあるだけに、専用工場への投資準備も進める一方、当面は混流生産を軸に投資コストを抑えて競争力の高いEVを生産していく方針だ。
※日刊自動車新聞2022年(令和4年)5月25日号より