自動車メーカーが工場におけるカーボンニュートラル(温室効果ガス実質排出ゼロ)に向けた取り組みを本格化する。マツダは2日、2035年までに省エネ技術の導入や再生可能エネルギー、脱炭素燃料の活用で国内外の自社工場でカーボンニュートラルを目指すと発表した。自社工場でのカーボンニュートラルはトヨタ自動車やダイハツ工業も35年に実現する方針。「スコープ3」と言われるサプライチェーン全体での対応を進める一方、欧州を筆頭に環境規制の厳格化が進む中で、まずは自社の事業活動で排出する二酸化炭素(CO2)の削減を加速する。
マツダは50年にサプライチェーン全体でのカーボンニュートラル実現を目指す一環でまず自社の生産活動に伴うCO2排出(スコープ1)、自社が調達した電力などエネルギーを生み出すためのCO2(スコープ2)での実現を目指す。
マツダのサステイナビリティレポートによると世界の自社工場で20年度に排出したCO2は52万9千㌧だった(スコープ2の排出量は44万1千㌧)。このCO2を35年までに実質ゼロにする。
自動車業界では欧米の主要自動車メーカーが30~35年に自社工場でのカーボンニュートラルを目指すほか、トヨタやダイハツも35年をターゲットに対応を進めている。日産自動車は30年に19年比で41%削減する方針で、CO2を排出量削減する最新の生産技術を栃木工場に導入した。欧州などでライフサイクルアセスメントでのCO2規制の導入が加速していくなか、まずは車両製造時のCO2削減を進める。
欧米のメーカーと比べて日本の自動車メーカーがより力を入れているのが生産技術による省エネだ。主要生産拠点である日本は再エネの調達が難しいことが背景にある。マツダの場合、CO2排出量が多い塗装の乾燥工程を塗料の低温硬化技術などで電力使用量を削減。将来的には塗装レス化も検討し、塗装工程のCO2排出量を現状比で50%削減する。塗装以外では生産設備に使用するクーラントポンプのインバータ制御の改良やサーボモーターの効率化などで電力を低減する。バイオマス燃料などの脱炭素燃料を活用した車両を工場内の部品物流や人員輸送にも活用し、CO2低減につなげる。
一方、再エネの調達確保に向けてマツダは企業が発電事業者から再生可能エネルギーを直接購入できる契約形態「コーポレートPPA(電力購入契約)」も活用する。日本国内では再エネの需給ひっ迫も予測されており、マツダはスコープ3を含めたカーボンニュートラルの実現にはサプライヤーなど地元での再生可能エネルギーを安定調達するための仕組みづくりを重要視する。
※日刊自動車新聞2022年(令和4年)6月3日号より