自動車メーカーの2021年4~9月期(第2四半期累計)の業績発表が28日の日野自動車を皮切りにスタートする。半導体不足や新型コロナウイルス感染拡大によるサプライチェーンの混乱による生産調整や、エネルギー、原材料価格の高騰によるマイナスの影響は避けられない。為替水準は各社想定より円安で推移しており、輸出ではプラス影響が見込まれるものの、海外調達部品のコストアップ要因にもなる。さらに各社が計画していた今秋以降の挽回生産計画も半導体不足の長期化もあって修正を迫られるのは必至。通期業績を見通せない状況が続く。
21年4~6月期では、上場する自動車メーカー全9社が増収増益となり、コロナ禍で落ち込んだ前年同期からの回復が鮮明となった。しかし、世界的な半導体不足の影響が拡大したのに加え、コロナ禍の影響で東南アジアの部品調達に支障が生じ、自動車各社の減産規模も拡大した。トヨタ自動車は9、10月に大幅な減産を余儀なくされ、その後も生産調整を続けている。
生産調整の影響は自動車メーカー各社の新車販売にも影響しており、米国や中国でも受注は順調でも納車ができないことで新車販売台数が低調に推移している。
さまざまな原材料価格やエネルギー価格の上昇も自動車メーカーの収益を圧迫する要因となっている。中国の電力不足に伴って自動車用エンジンなどに使われるアルミ合金の原材料であるマグネシウムが不足するなど、新たなサプライチェーンの懸念も広がっている。
為替水準は期初の自動車各社の想定よりも円安となっている。25日正午の円相場は1ドル=113円だったのに対して、トヨタの通期の想定為替レートは1ドル=105円。輸出では利益押上げ効果が見込まれる。ただ、円安は海外から調達している部品のコストアップ要因にもなっており、原材料価格高騰と相まって収益を押し下げる。
自動車各社は半導体不足による上期の減産分を、下期に挽回することを計画していた。しかし、半導体不足は依然として解消されておらず、問題は長期化している。トヨタは11月に計画していた過去最大規模となる100万台超の生産を断念するなど、サプライチェーンの問題は払しょくできていない。
トヨタの熊倉和生調達本部長は「一番悪い時期は脱した。リスクも少し減っている」とするものの、先行き見通しは不透明で、業績予想をどう修正するのか、注目される。
※日刊自動車新聞2021年(令和3年)10月26日号より