新型コロナウイルスの感染拡大をきっかけにクルマのサブスクリプション(定額利用)サービスが広がっている。トヨタ自動車のサブスク「KINTO(キント)」では昨年7~12月の申し込み数が前年比で6倍以上に増加。ホンダの中古車のサブスク「マンスリーオーナー」では稼働率が8~9割で推移し、需要の高まりからサービスを全国に拡充している。コロナ禍でマイカーをより気軽に利用できるサブスクへの関心が高まる一方でサービス内容の理解度はまだ低く、ユーザーメリットの訴求が本格的な普及のカギを握る。
サブスクは動画や音楽配信などのデジタルサービスで火が付き、衣料や飲食、自動車といったリアルな世界にもサービスが広がっている。
トヨタのキントは2019年に東京で先行した後に全国にサービスを展開。ただ、全国展開から5カ月経った同年11月までの累計申し込み件数は1千件に届かず、サービス開始当初は苦戦を強いられていた。20年に入り、取り扱い車種数の拡大やキント専用特別仕様車の設定、利用プランの拡充などによる商品強化に加えて、人気俳優を起用したテレビCMの積極展開などで認知度向上に取り組んだ結果、20年6月以降は新規申し込み数が1千件超のペースを維持し12月までの累計申し込み件数は1万2300件にまで拡大した。
増加要因の一つが若年層の取り込みだ。累計申し込みベースでは30歳代以下が4割を占め、契約前の保有状況が「保有車なし」もしくは「他メーカー」が6割となるなど、新規顧客の開拓に成功した。また、インターネット経由の申し込みが6割、そのうち30歳代以下は8割に達し、コロナ禍で高まる非接触ニーズを取り込んだ。キントの小寺信也社長は、「大きな狙いとしては若年層やクルマ購入経験がない客が中心となる」と述べ、クルマを使った〝コト消費〟をセットにした新サービスを展開するなど、クルマ離れが進む若者を振り向かせる新たな取り組みを進める。
ホンダのサブスクは、利用期間が最短1カ月から最長11カ月と他社のサービスより短いことが特徴だ。従来の車両購入による「所有」とカーシェアなどの「利用」の中間に位置するニッチ(隙間)を狙ったサービスだが、コロナ禍で増えた「プライベート空間」「自分しか使わない」「一定期間」といった移動ニーズに合致し、サービス開始から1年間で会員数は1千件を突破。サービスエリアは9道府県に拡大し、100台超の車両の稼働率は8~9割で推移しているという。
スパコロ(林秀紀社長、東京都港区)が昨年12月に発表した自動車のサブスクに関するアンケート結果によると、サブスクの認知率は65.5%であったが、そのうち「知っているがサービス内容は分からない」は37.8%となり、クルマのサブスクを知っていても半数以上はサービスを理解していないことが浮き彫りとなった。サブスクに対するイメージでは「購入するより高くつく」(23.5%)が「購入するより安くつく」(18.8%)を上回り、さらに「特にイメージはない」が22.0%という結果も出ており、サービス内容の理解度はまだまだ進んでいない。
※日刊自動車新聞2021年(令和3年)1月23日号より