半導体不足による自動車の生産停止や減産で、国内市場で新車の納車遅れや新型車の発売時期が遅れるなどの影響が拡大している。これまで比較的、影響を軽微に抑えていたトヨタ自動車やダイハツ工業も6月に入って工場の稼働を一時的に停止するほか、スズキや三菱自動車などでは減産幅を4、5月と比べて拡大する。自動車メーカー各社は生産機種の入れ替えなどで減産規模の最小化を図ってきたが、半導体の在庫が減る中、安定的な調達のめども立っておらず、正常化には時間を要する見通しだ。
世界的に半導体不足が広がる中、半導体の在庫を厚くしていたことから影響を軽微に抑えることができていたトヨタは7日にトヨタ自動車東日本岩手工場第1ラインの稼働を停止した。ダイハツも6月中旬に同社として初めて半導体不足による操業停止日を一部工場で設ける。スズキは6月に入ってから相良工場、磐田工場、湖西工場で3~9日間の稼働を止める。4、5月と比べて稼働停止日が増え、生産計画に対する影響台数は4万台程度になる見込み。
自動車メーカー各社は減産を余儀なくされているものの、新車市場は順調に推移しており、販売現場では納期遅れに対する懸念が強まっている。
ホンダの新型「ヴェゼル」は一部グレードの納期が来年以降となる。トヨタの「ヤリスクロス」などでは注文から納車まで5~6カ月程度を要するケースもある。トヨタの場合、受注が好調なのに加え、慢性的な電池不足もあって、特にハイブリッド車(HV)の納期が長期化しているもようだ。
半導体不足の影響で、新型車の投入計画も後ずれしている。日産自動車は年央に予定していた日本市場向け新型車「アリア」の発売時期が「今冬」になると発表。コロナ禍の影響に加え、半導体不足も一因だ。スズキは今春投入を予定していた「ワゴンR」の派生モデルの投入時期を遅らせた。
今期に新型「アクア」や「カローラクロス」などの新型車の投入を控えるトヨタの販売会社幹部は「半導体の影響で流動的な部分も出てきており、今後の動向を注視する」と、新型車投入時期の遅れによる経営への影響を懸念する。