自動車メーカーは、新型コロナウイルス感染拡大で足元の業績が悪化する中、コロナ後の中期的な見通しも立てづらい状況に直面している。感染収束のめどが見えず、接触頻度を減らす新しい生活様式が浸透する中で産業構造が変化する可能性も出てきた。国内メーカー各社は新型コロナ感染拡大前に中期経営計画を示すが、コロナ禍という想定外の誤算に直面したことで目標達成への道のりはより厳しさを増している。こうした中、日産自動車は28日の決算発表時に新たな中期経営計画を発表する予定だ。アライアンスを組む三菱自動車も先期に3カ年計画を終え、新たな中計の準備を進める。自動車産業はすそ野が広いだけに、各メーカーは業績回復に向けた施策とともにコロナ後に大きく変化する自動車産業を見据えた取り組みを示す必要がありそうだ。
日産は2022年度を最終年度とした中期経営計画を掲げているが、主力の米国を中心とした販売不振によって19年7月に人員削減を含む改革案を示した上で目標値を下方修正した。しかし、20年3月期の業績予想はリーマンショック以来の赤字に転落する可能性を発表しており、業績回復に向けたより踏み込んだリストラ策を打ち出すとみられる。
現中計では、世界生産を660万台まで引き下げて稼働率を8割以上に高める計画だが、19年度の新車販売台数は500万台を下回っており、業績回復にはさらなる効率化策が求められる。ポイントとなるのが仏ルノーと三菱自の企業連合による「リーダー/フォロワー」の事業戦略だ。3社で開発と生産体制を見直して効率化を図る方針だ。加えて、新中計ではコロナの影響も踏まえた大胆なリストラ策が示されるかが焦点となる。
現在進行中の中計にもコロナの影響は影を落とす。マツダは25年3月期を最終年度とする中計で、トヨタ自動車と新設する米国工場の生産増を見越し年間販売台数を180万台に引き上げる方針を掲げるが、コロナ禍で新工場の完成が遅れる可能性が出てきた。外出制限による販売影響が出ている中で、20年3月期の決算会見で梅下隆一執行役員はオンラインセールスに注力していく方針を示した。
スバルも中期経営ビジョン「STEP」の中で、今年度を最終年度とする3カ年計画で売上高や営業利益率目標を掲げるが、中村知美社長は「非常に厳しい状況が予想されることから、状況を見定めたい。ただし、品質改革などコロナ禍でも進めるべき改革はしっかりと進めていきたい」と述べている。
感染影響の予測が難しく多くの上場企業が通期予想を非開示とする中、トヨタ自動車の豊田章男社長は「1つの基準を示す必要がある」とあえて今期の業績予想を打ち出した。すそ野が広い自動車産業だからこそ、一部自動車メーカーはコロナ禍の視界不良の中でも一定の方針を示す姿勢だ。