自動車メーカー各社が、IT系人材の確保に向けてソフトウエアやAI(人工知能)の研究拠点を東京都内に開設している。トヨタ自動車は自動運転技術開発会社の本社機能を昨年7月に東京都中央区日本橋に移転。ホンダや日産自動車などもITの研究拠点を都内に構えている。スバルは、コロナ後の新常態(ニューノーマル)に対応したAI開発拠点を東京都渋谷区渋谷に新設した。自動運転技術やモビリティサービスの開発はソフトウエアが鍵を握るが、異業種も含めソフト系エンジニアの獲得競争は激しさを増している。各社は従来の研究開発拠点とは異なる職場環境を用意し人材確保にしのぎを削る。
TRI-ADが日本橋に移転した本社オフィス自動車メーカーの研究開発拠点の多くは車両生産工場に近い郊外に構えるケースが多い。こうした中、IT系人材が集中する都内に先進技術の研究開発拠点を設置し、GAFA(グーグル、アップル、フェイスブック、アマゾン)に代表されるIT企業のような職場環境を用意する動きが広がっている。
スバルが12月に渋谷に開設するAI開発拠点「スバルラボ」は、約50人規模のオフィス。半数程度を東京事業所(東京都三鷹市)と群馬製作所(群馬県太田市)からスタッフが異動し、残りは新規採用する方針だ。オフィスは密の回避とコミュニケーションの向上を両立させ、さらにリモートワークとの併用を視野に入れた設計とした。
トヨタグループの自動運転技術開発を担うトヨタ・リサーチ・インスティテュート・アドバンスト・デベロップメント(TRI―AD)の本社オフィスは、計2万1500平方㍍広いフロアに、立ち乗り電動車でオフィス内を回遊できる「ストリート」や、人工芝にハンモックやクッションを備えたリラクゼーションスペース、畳敷きの会議室などが特徴だ。
海外のIT系企業のような快適な職場環境と立地条件で現在の社員数は630人に拡大し、国内外の人材確保に成功している。
ホンダは2016年にAI研究拠点を東京都港区赤坂に開設。当初は本田技術研究所がロボティクスなどの新領域におけるAIなどの技術研究を行っていたが、19年にはホンダ本体も合流して「ホンダイノベーション東京」と名称を変更し、現在はモビリティサービスやコネクテッドの研究を中心に行っている。日産自動車も16年に社内ソフトウエア開発チームを立ち上げ、東京都目黒区中目黒にオフィスを新設。同チームではコネクテッドサービスの実証実験など行っている。
三菱自動車も東京都港区に車載ソフトウエア開発拠点「ソフトウエアイノベーションセンター」を昨年10月に開設。現在約30人が勤務しているという。