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自動車業界トピックス

自動車メーカー各社、電費向上技術実用化へ

EVの商品力アップに不可欠

自動車メーカーが電気自動車(EV)の電費向上に向けた技術の実用化を進めている。電池の搭載量を増やせば航続距離を伸ばせるが、電池の重量が増加して思うように距離を伸ばせないジレンマがある。電池のエネルギー密度向上をはじめ、熱マネジメントやパワートレインの制御技術の改善などとさまざまな切り口で、EVの商品力を高めていく考えだ。

 カタログ電費は1㌔㍍走行する際に使用する電力量を示す「交流電力量消費率」で示される。数値が少ない方が環境性能に優れ、車両サイズが大きい輸入車のEVが200㍗時/㌔㍍前後、軽の日産自動車「サクラ」は124㌔㍍とガソリン車同様に小型車の方が電費が良い。

電費の改善手段はさまざまあるが「電費向上のポイントはエネルギー密度の向上による電池の軽量化だ」とトヨタ自動車担当者は指摘する。特に航続距離を必要とするCセグメント以上のEVとなると大容量の電池を搭載するため、車両重量はガソリン車を上回る2㌧以上にもなるモデルも珍しくない。

アプローチの一つが熱マネジメントだ。トヨタがエアコンの消費電力を低減するために「bZ4X」に採用したのが新しい構造のヒートポンプシステム。ユニットの排熱によりラジエーターの霜を溶かすシステムで、ヒートポンプシステムを低温まで作動させることで、最小限の電池容量で冬場でも十分な距離を走行できる仕様に仕上げた。

電池パックへのセル(単電池)搭載にもノウハウがある。日産は62㌔㍗時の電池を搭載する「リーフe+」で40㌔㍗時と同じサイズの電池パックで電池の大容量化を実現した。20日に発表したサクラでは、そうしたノウハウを活かし、搭載スペースや車両重量の制約が大きい軽で必要十分な航続距離を確保する電池パックを搭載した。

大容量の電池を搭載する場合、モーターも大型化するだけにモーターの効率向上も進めている。bZ4Xではモーターに新開発の低粘度オイルを採用し、効率を改善。日産「アリア」では高速走行するシーンでの効率を改善するために、永久磁石を使わない界磁巻線型の新開発モーターを使用した。

トヨタは128㍗時/㌔㍍の電費を達成したbZ4Xと比べて電費を将来的に30%以上低減する目標を掲げる。電池材料や電池パックの進化に加え、走行抵抗の低減やさらなる熱マネジメントなどを通じて性能やコストでガソリン車にひけをとらないEVの開発を目指す。

※日刊自動車新聞2022年(令和4年)5月27日号より