自動車メーカー9社の2020年4~12月期決算が出そろった。4~6月期のコロナ禍の影響で9カ月累計は全社が減収減益となったが、10~12月の3カ月実績では7社が前年同期を上回る営業利益を確保した。このうち、4社は売上高でも前年同期実績を超えており、新型コロナウイルス感染拡大の長いトンネルからひとまず抜け出した格好だ。ただ、半導体の供給不足や新型コロナ感染再拡大といったリスク要因を踏まえ、通期の売上高は前回見通しから4社が下方修正した。
10~12月期は自動車業界全体にとって上向きとなる3カ月間だった。日米欧中の新車市場が秋以降に回復し、トヨタ自動車、ホンダ、スズキ、いすゞ自動車の4社が前年同期の売上高を上回った。フリートの縮小など販売の質向上を図る日産自動車や東南アジアの回復遅れが響いた三菱自動車は大きく落ち込んだが、スバルやマツダも3カ月間では前年並みの販売台数にまで戻してきた。
10~12月期の営業利益もトヨタが前年同期比54.3%増、ホンダが同66.7%増、マツダが同221.5%増と大幅に伸長した。全体的に販売台数の拡大に伴う販管費の増加や円高による為替差損、原材料価格の相場上昇はあったものの、新型コロナ感染拡大以降に取り組んできた固定費の削減や研究開発費の縮小といった収益改善策が実を結んだ。
赤字が続いていた日産も4四半期ぶりに営業黒字に転換し、内田誠社長兼最高経営責任者(CEO)は「第3四半期のみとはいえ、営業利益率は1.2%となり、充分な回復となってきた」と収益改善に手応えを示した。
通期の収益見通しも上方修正が相次いだ。大手3社ではトヨタが7千億円、日産が1350億円、ホンダが1千億円上方修正した。営業赤字から収支トントンの見通しまで持ち込んだマツダの丸本明社長は「満足はしていないが、来期に向けての一つの流れができてきた」と述べた。
収益は全体的に押し上げムードにある一方、売上高の見通しはばらつきが大きい。トヨタやマツダなどは上方修正した一方、ホンダは「売れ筋車種の半導体が足りなくなった」(倉石誠司副社長)ため世界販売を10万台、スバルは「共通部品が多く影響を大きく受けた」(岡田稔明取締役専務執行役員)ことなどで世界生産を4万8千台下方修正した。影響の最小化に向けて各社は生産機種の入れ替えなど対応を急ぐ。