自動車公正取引協議会(自動車公取協、神子柴寿昭会長)は、検討を進めていた中古車価格の支払総額表示義務付けの内容を固めた。自動車公正競争規約に、表示価格で実際に購入できない場合は「不当表示」となることを明記するほか、違反した事業者に最高500万円の違約金を科す。6月の総会で承認を得たのち、2023年10月の施行を目指す。中古車販売店によっては相場よりも割安な見せかけの価格で集客して高額なオプションを売りつける行為が散見される。これにメスを入れることで、中古車市場の信頼性を高めていく考えだ。
25日の理事会で自動車公正競争規約の改正案を決めた。改正後は広告や商品に価格を表示する場合、消費税など含めた車両価格に諸費用(保険料や登録料など)を加えた「総支払い額」での表示を義務付ける。内訳として車両価格と諸費用の額を表示する必要もある。
今回の支払い総額表示の義務化で肝となるのが、車両価格と諸費用の範囲だ。一部の中古車販売店では、「納車準備費用」「納車点検費用」「納車準備費用」などを、諸費用として扱うケースがある。同協議会では、こうした費用について「車両価格に含まれるべき中古車の商品化のための費用」との規定を明確に定める。新たなルールでは「諸費用」として請求できなくする。「登録代行手数料」などは、1時間当たりの作業コストなどから算出した合理的な額にすることを求める。
また、「定期点検整備」と「保証」の有無は、価格、品質に重要な影響を及ぼすことから、支払総額近くに表示することとした。さらに「整備付き」の場合は、その費用を車両価格に含め、「整備なし」は整備が必要な部分を表示する。
「不当な価格表示」への処分も厳罰化する。違反販売事業者には、措置として最も重く、社名公表も可能な「厳重警告」を初回から出せるようにする。悪質な場合は、初回で最大100万円、2回目以降で最大500万円の違約金も科すことができる。これは「走行距離」や「修復歴」の不当表示と同等となり、自動車競争規約の中で最も重い処分となる。
改正案は総会で決議した後、23年3月に消費者庁、公正取引委員会の認定・承認を目指して準備を進める。事業者がプライスボードの変更やシステム改修などに対応する必要があるため、半年程度の移行期間を設け、23年10月1日から施行する見込み。
中古車小売り市場ではこれまで、中古車情報サイトに相場よりも安い価格を表示しておきながら、商談で高額なオプションの付帯を購入条件にするなど、規約に違反する行為が問題視されてきた。こうした中、同協議会では21年9月、覆面調査で不適切な表示や販売手法が明らかになった大手中古車専業11社を指導。日本中古自動車販売協会連合会(JU中販連、海津博会長)なども支払総額表示義務化を支持している。
※日刊自動車新聞2022年(令和4年)3月28日号より