自動車業界で、電子データ取引の改ざんを防ぐ技術「ブロックチェーン(分散型台帳)」の活用機運が高まっている。トヨタ自動車は、ブロックチェーン技術を活用したデータ保全プラットフォームを2023年3月以降に有償提供する。電動化や自動運転などへの対応で他社との協業が広がる中、技術情報の証拠力を高めて知財係争訴訟への対応力強化につなげる。クルマが持つ膨大な情報を相互利用するためには、データの非改ざん性が重要となる。電動車のサプライチェーンにおける環境測定や中古車売買情報など、自動車業界でもデータを保全するためにブロックチェーンの活用を模索する動きが広がっている。
トヨタのデータ保全プラットフォーム「プルーフ・チェーン・オブ・エビデンス(PCE)」は、マイクロソフトが提供するクラウド基盤「マイクロソフト・アジュール」上に構築する。自社が持つ技術情報などの電子データを、ブロックチェーンを活用した保全プラットフォームに記録し、データのオリジナル性を担保する。他社との協業における保有知財の証明や、発明を秘匿する場合に他社が特許を取得した際の使用権維持などの問題が発生した場合にPCEによる解決が図れる。
開発したシステムは現在、トヨタ社内でPoC(概念実証)を行っており、9月からは社内実装と社外にPoC先の開拓を行う。来年3月にはSaaS(サービスとしてのソフトウエア)を開発して商品化する計画だ。
ブロックチェーンは暗号資産の基盤技術として発明されたものだが、クルマが持つ膨大な情報を共有化する上で同技術を活用しようとする動きは広がっている。ホンダやマツダなどは、ブロックチェーン技術を活用した二酸化炭素(CO2)排出量測定などの標準化に取り組む非営利団体「モビリティ・オープン・ブロックチェーン・イニシアチブ(MOBI)」に参画し、カーボンニュートラル技術の開発に生かす。
流通過程で車両情報が改ざんされる恐れがある中古車業界でもブロックチェーンの活用が注目されている。一部の中古車査定会社や個人間売買サービス事業者などでブロックチェーンの導入に向けた動きも出てきている。
※日刊自動車新聞2022年(令和4年)6月9日号より