国内の自動車メーカーや変速機メーカーで構成する「自動車用動力伝達技術研究組合」(TRAMI、橋爪秀史理事長)は、最高5万rpm(1分間に5万回転)レベルの超高速回転に対応する駆動モーターや減速機などの研究開発を強化する。研究対象を電動パワートレインや制御などに広げ、産学連携体制も強化する。超高速回転技術を早期に実用化し、欧米や中国より競争力の高い電気自動車(EV)の実現を目指す。
TRAMIはもともと、自動車用変速機の伝達効率向上や音振動対策、軽量化などの基盤技術を産学連携で研究するために2018年に設立された組織だ。世界的な電動化シフトを踏まえ、20年から電動化技術の研究に軸足を移してきた。今後は駆動モーターから減速機、差動装置などに研究対象を広げ、本格的な研究開発に乗り出す。
現在、実用化されているEV用の駆動モーターは最高1万5千rpm程度が主流だが、高回転化により小型・軽量化が図れる。半面、エネルギー効率の悪化や発熱・振動対策のハードルも上がり、これらの課題に個社で対応するのは困難なことから、産学連携で研究を進める。
23年からモーターや駆動ユニットに加え、インバーターやシステム制御を含め、電動パワートレイン全体を研究対象とする。産学連携の研究テーマとして、ギア噛合部の油膜形成と破断の評価法や、モーター内部の温度分布を非接触で計測できる計測技術、電費向上技術などに取り組む。また、高出力密度のコアレスモーターや可変磁力モーター、ローターを冷却する解析モデリング技術などについても研究する。
自動車業界では、日立アステモが22年3月に最高2万2千rpmのEV用モーターを開発。愛知製鋼も最高3万4千rpmの試作モーターを披露済みだ。TRAMIでは、現在の技術で実現可能な水準として5万rpmを想定し、日本の企業や大学・研究機関の技術を結集して研究開発を加速させ、競争力の高い日本のEV開発につなげていく。
※日刊自動車新聞2022年(令和4年)12月7日号より