日本自動車工業会(自工会、豊田章男会長)は、政府の「グリーン成長戦略」策定に際して自工会の要望をまとめるために立ち上げたタスクフォースの枠組みを生かし、カーボンニュートラル(温室効果ガス実質排出ゼロ)実現に向けた課題解決に乗り出している。自工会では、自動車メーカー各社が強みを持つ分野ごとにタスクフォースを立ち上げ、多様な選択肢で脱炭素化を目指している。従来の委員会や部会の枠組みを超えてタスクフォースを中心に直面する課題を洗い出し、政府や関連団体との連携をよりスピーディーに進めていく。
自工会では委員会とその下に部会組織があり、メーカーの垣根を越えた約300の事業に取り組んでいる。2020年10月の組織改革では、これまでの12委員会55部会から5委員30部会に集約し、事業推進体制の選択と集中を図った。タスクフォースはこうした組織を横断し、政府が50年のカーボンニュートラル実現に向けて21年6月に具体化したグリーン成長戦略に先立って、自工会でより「研ぎ澄まされた要望を提言する」(担当者)ために同年4月に立ち上げた。
自動車産業がカーボンニュートラルを実現するためには電動化の推進だけでなく、資源採掘から製品廃棄までのライフサイクルアセスメント(LCA)視点が欠かせない。多様な視点で脱炭素化を目指すため、ハイブリッド車(HV)とプラグインハイブリッド車(PHV)、燃料電池車(FCV)はトヨタ自動車とホンダ、電気自動車(EV)は日産自動車と三菱自動車、カーボンニュートラル燃料はマツダ、軽自動車はスズキとダイハツ工業といった各タスクフォースでリード役を定め、課題の洗い出しを行っている。
EVの市場導入やカーボンニュートラル燃料の実用化など脱炭素化の取り組みを進めていく中で、技術的な課題のみならず法規制や経済合理性など解決すべき問題も積み上がっている。充電インフラの整備では充電器の設置数に加え、最適な設置場所や料金設定、充電時間などのルールが必要となる。自工会ではタスクフォースによる課題のリスト化を進めるとともに、関係省庁や他産業界との連携を従来以上に強化していく考え。テーマに応じてタスクフォースの枠組みも柔軟に変化させ、課題解決のスピード感を早める。
※日刊自動車新聞2022年(令和4年)6月4日号より