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自動車業界トピックス

自工会と石連、次世代燃料を共同研究する「AOI」プロジェクト

スーパーリーンバーンエンジンなどの液体燃料を探る

日本自動車工業会(自工会、豊田章男会長)と石油連盟(石連、木藤俊一会長)がカーボンニュートラル(温室効果ガス排出実質ゼロ)に向けた次世代燃料の研究を進めている。プロジェクト名は「AOI(オートモービル&オイルイノベーション)」。スーパーリーンバーン(超希薄燃焼)エンジンなどの将来の内燃機関に最適な液体燃料のレシピを解明し、二酸化炭素(CO)の削減を図る。

AOIプロジェクトのメンバー(左からトヨタの林氏、日産の菊池氏、エネオスの菅野氏、石連の貝瀬知香子技術環境部担当部長)

AOIは2020年度に両団体が開始したプロジェクト。両団体の共同研究は1997年から2019年度まで「JCAP」「JATOP」「J―MAP」と、名称や目的を変えながら行われてきた。これまでと異なる点は「足元の規制対応ではなく、50年のカーボンニュートラル達成につなげるための将来を見据えた研究であること」(エネオス中央技術研究所・菅野秀昭首席研究員)だ。将来の内燃機関に最適な液体燃料を30年までに実用化し、合成燃料やバイオ燃料が普及するまでのCO排出量のベースラインを抑制するとともに、燃費の向上によりコストがかかる合成燃料などの必要量も減らす。

具体的な研究テーマの一つがガソリンエンジンにおけるスーパーリーンバーン環境に最適化した液体燃料だ。スーパーリーンバーンは、空気と燃料を14.7対1の割合で混合する通常の理論空燃比(ストイキオメトリー)に対し、空気の割合を2~3倍ほどに増やした状態での燃焼を指す。燃料を減らして同等の仕事量を得ることで燃費は向上するが、燃焼が不安定になる点が課題だ。

そこで重要になるのが燃料の進化だ。自工会と石連は具体的な成果を現状で明らかにはしていないものの、一般的に油は軽い成分の方が燃えやすい。オレフィンやパラフィン、アロマ(芳香族)などの組み合わせの中から最適解を見つけ出す。スーパーリーンバーンの採用を自動車メーカー全社が決めている訳ではないが、燃えにくい環境で安定的に燃える燃料の開発は「どのような燃焼方式にも効果的」(日産自動車・菊池勉氏)という。

かつては硫黄分の削減やオクタン価の向上にかかるコスト負担をめぐる衝突もあった両団体だが、足元ではAOIや政府を交えた合成燃料の導入に向けた官民協議会の設立など協力関係を深めている。背景にあるのはカーボンニュートラルに向けた「危機感の強さ」(菅野氏)だ。

自動車業界では、再生可能エネルギーの供給量の可能性などを踏まえ、内燃機関を含めた複数のパワートレインを残す重要性を訴えかける一方、石油業界ではエネルギーレジリエンス(強靭性)の観点などで液体燃料をエネルギー源の選択肢として残す必要性を訴求する。

しかし、カーボンニュートラル時代に内燃機関や液体燃料を存続させるための課題は大きい。自動車メーカーでも次世代燃料の研究や予測は行っているものの、「(石油会社と)一緒にやらなければ成果は出ない」(トヨタ自動車先進技術カンパニー電動化環境材料技術部新領域材料創生室・林倫主査)という。

AOIプロジェクトで20年度から実施してきた基礎研究フェーズは今年度で終える。これまでは燃焼時の着火や拡散といった現象を根本的に見直す基礎研究を行ってきたが、23年度からはその成果を踏まえ、市場導入に向けた実証フェーズに移行する。業界間の協力関係を深め、カーボンニュートラルに向けた研究を加速する。

(水鳥 友哉)

※日刊自動車新聞2022年(令和4年)10月1日号より