金融庁の自動車損害賠償責任保険審議会(自賠審)は、2023年度の自賠責保険料を引き下げる方針を決めた。先進運転支援システム(ADAS)搭載車の普及により交通事故が減少しているためで、21年度以来、2年ぶりの引き下げとなる。引き下げ幅は20日に開く次回会合で決めるが、全車種平均で10%程度になる見通しだ。
毎年、4月から適用する新たな自賠責保険料の料率(保険金額に対する保険料の割合)は、損害保険会社が加盟する損害保険料率算出機構(早川眞一郎理事長)が提出した基準料率を踏まえ、自賠審で議論・決定する。
交通事故の被害者や遺族を救済するための自賠責保険は、契約者から集めた保険料と保険会社が支払った保険金の収支に大きな差額が生じないように運営されている。保険金支払いが減少すれば「自賠責保険料も引き下げることが適当である」(自賠審)として、全車種平均で引き下げの方向性が示された。
警察庁によると、21年の交通事故発生件数(速報値)は前年比1.3%減の30万5196件だった。04年の95万2720件をピークに減少が続いている。死者数も同7.2%減の2636人と、2年連続で3千人を下回った。
各保険会社の支払保険金総額(支払共済金を含む)は、16年度から減少が続いており21年度は約5600億円だった。支払件数も約84万件で15年度と比べて約32%減った。
自賠責保険料は、20年に全車種平均で16.4%、21年に6.7%をそれぞれ引き下げた。22年は据え置いた。
来年度以降の自賠審は、従来、2回に分けていた料率検証結果の報告と新料率の決定を原則1度の自賠審でまとめて行う方針だ。料率改定がない年は従来通り、料率検証結果の報告の場として開く。政府の「経済財政運営と改革の基本方針2022」(骨太の方針)に盛り込まれた既存業務の見直しや働き方改革の推進などを踏まえた措置だ。
※日刊自動車新聞2023年(令和5年)1月17日号より