自動車損害賠償責任保険(自賠責)の保険料の一部として徴収する賦課金の増額などを盛り込んだ自動車損害賠償保障法と特別会計に関する法律の一部を改正する法律案が9日、衆議院本会議で賛成多数で可決、成立した。交通事故による重度後遺障がい者とその家族に対する救済事業などの充実と継続性のある支援体制を構築するのが目的。一方で、自動車安全特別会計から一般会計に繰り入れられた自賠責の保険料による積立資金の早期完済への道筋を明確にすることなく、自動車ユーザーに新たな負担を求めるのは拙速すぎるとの声は根強い。
自賠法の一部改正では、「当分の間」の措置として自動車事故対策勘定の有限の積立金を財源としている被害者支援と事故防止対策について、保険料の一部として徴収している賦課金を増額することで安定的な財源を確保する考えだ。
これに伴い、来年4月1日から自賠責の保険料の一部として徴収する賦課金は、現在の1台当たり年間16円から最大で150円に値上げとなる見通しだ。賦課金の上げ幅は今後、議論・検討を行う。
一般会計からの繰り戻しは、増額の上、5年連続で実現。新たに国土交通大臣と財務大臣との合意文書で、合意期間である今後5年間、継続的に繰り戻しを実施することなどが記載された。ただ一方で、未だ約6千億円が繰り戻されていない状況にあり、完済に向けた具体的な返済計画も明示されていない。
被害者とその家族においては、救急医療体制分野の減額や「介護者なき後」の問題など先行き不安は深刻だ。支援体制の充実が急務であるとともに、早期の繰り戻しの実現が何よりも求められている。
※日刊自動車新聞2022年(令和4年)6月11日号より