2011年度をピークに減少傾向にある整備要員数が、20年度は前年比0.02%増の39万9218人と下げ止まった。業態別では専・兼業が同0.1%減の26万3470人と9年連続で減少する一方、ディーラーは同0.2%増の11万7355人と3年連続で増加した。自動車整備白書は「専・兼業は組織的な採用活動が難しく人材確保に苦慮しており、ディーラーは整備資格を有しない新卒者や転職者も整備要員として積極的に採用する」と両者の差を分析。平均給与や平均年齢でも両者の差は広がるばかりだ。
20年度の整備資格保有者は、専・兼業が同0.7%増、ディーラーも同1%増とともに増加した。整備白書では専・兼業が「前年に大きく減少した反動増とみられる」とする一方で、ディーラーは「整備士資格保有者以外も(就職後の資格取得を想定して)採用してきたことが中期的に見て整備士の増加につながったと推測される」と一過性の要因と長期視点による差を指摘している。
整備要員の平均年齢は、20年度が同0.2歳上がった45.7歳で4年連続上昇した。業態別では専・兼業とディーラーともに上昇。特に専・兼業が同0.3歳上がった50.2歳と4年連続で伸びた。ディーラーは同0.2歳上がった35.7歳となり、両者の差は14.5歳に広がっている。
両者に共通する課題もある。整備要員1人当たりの年間平均給与の業態別による格差と他の業種との格差だ。全体では前年比0.1%増の396万3千円となり、8年連続で増加した。整備白書は「人手不足解消のため、給与水準を上げて待遇改善を図ろうとしていることがうかがえる」と分析する。
業態別でも専・兼業が同0.9%増の365万円、ディーラーが同1.2%増の466万円とともに増加したが、両者の差は再び拡大した。ただ、ディーラーも国税庁がまとめた最新の正規雇用者の平均給与503万円とは隔たりがある。
自動車整備はコロナ禍でもエッセンシャルワーカーとして日常生活の維持に不可欠な仕事として認められている。コロナ禍で不特定多数と接触しない車移動のニーズが高まる中、クルマ社会の安全を担う整備士の待遇改善には自動車業界全体で取り組む必要がありそうだ。
また、少子高齢化に伴う整備士のなり手不足も共通の課題となる。文部科学省がまとめた学校基本調査によると、20年度の専修学校の自動車整備科の入学定員1万2195人に対し、入学志願者数が9416人、入学者数が8168人だった。入学志願した未入学者数は、09年以降最多の1248人になった。ただ、入学志願者数が3年連続で増加している明るい兆しもある。
とはいえ、人口減少は自動車業界だけではなく幅広い業界が頭を悩ませている。特に整備業界のなり手不足は「給与水準の低さや、趣味の多様化で若者の自動車離れも影響している」(整備白書)と長年指摘される要因もある。15年からは若年層の労働力確保に加え、女性や外国人、シルバー人材の活用を拡大する土壌づくりが進められている。成果は一朝一夕で出るものではないが、こうした取り組みの強化で「整備士資格取得の受験者数を増やし、将来の整備業界を担う人財の育成を図ることが喫緊の課題」(整備白書)であることは間違いない。整備業界だけではなく、自動車業界全体としていま一度取り組む必要がある。
(この連載は村上貴規が担当しました)
※日刊自動車新聞2021年(令和3年)4月28日号より