部品メーカー各社が、理系の人材採用に注力している一方で、計画通りの確保に頭を抱えている実態が日刊自動車新聞社が実施したサプライヤーに対する新卒採用計画のアンケート調査で明らかになった。自動車の電動化や自動運転など、自動車関連技術が変化する中、サプライヤー各社も変化に対応した部品を開発するため、理系人材の採用を強化している。しかし、デジタル社会への加速で「電気・電子系専攻の学生は完全な売り手市場」(曙ブレーキ工業)で、自動車業界で確保するのは難しくなっている。
新卒採用に関するアンケート調査の結果によると2022年度(22年4月入社)の採用実績が「計画していた人数を下回った」と回答したサプライヤーが全体の4割以上を占めた。多くの産業でデジタル人材が求められている中、サプライヤーは採用したくても採れない状況が続いている。
現在の採用市場について、回答企業の約8割が「売り手市場」と答えた。新型コロナウイルス感染拡大によるリモート勤務が普及したこともあって、多くの企業がデジタルトランスフォーメーション(DX)を推進、これまで理系を採用していなかった業界でも理系を積極的に採用している。アフター・コロナやウィズ・コロナを見据え「大手を中心に理系の採用枠を拡大している企業が増えている」(NTN)ことも理系人材の採用難に拍車をかけている。
また、採用活動でオンライン面接が続いているため「一度も会わなかった内定者で辞退するケースが目立った」(アーレスティ)といった課題もある。オンライン採用活動のメリットを最大限に生かしながら、新たな取り組みを検討する企業もある。
住友ゴム工業は23年4月入社の採用活動で、オンラインインターンシップを7~9月、11~12月、2月に複数回に分けて実施し、各30人程度を受け入れる予定だ。オンラインインターンでは、事業ごとに3~4時間、ワークショップを中心に実施する。SNSを活用した採用活動にも取り組むなど、学生の目に止まる機会を増やしていく。
トーヨータイヤは、地元の関西の学生を中心に奨学金や研究活動の支援を検討している。東プレは、VR工場見学など、ウェブを活用して職場の様子が分かるツールを増やしていく。
多様な人材確保に向けて理系女子学生への採用に注力している企業も多い。ただ「女性の応募数が期待通りに増えていかない」(マブチモーター)と、思惑通りにはいっていない。女性の採用を強化するアルプスアルパインは、女性向けの採用広報に向けた動画作成やイベントの開催を通じて女性社員比率を高めていく構え。
※日刊自動車新聞2022年(令和4年)4月12日号より