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自動車業界トピックス

部工会の上場企業62社、営業利益が3割増

2023年度見通しはコロナ禍前の水準に

2023年度はコロナ禍からの回復は期待できそうだが…

日本自動車部品工業会(部工会、有馬浩二会長)がまとめた「自動車部品工業の経営動向(2022年度通期)」によると、部品各社の23年度通期業績はコロナ禍前の18年度水準まで戻る見通しだ。完成車メーカーによる車両生産の正常化や価格転嫁の促進などで業績回復を見込む企業が多かった。ただ、足元では原材料やエネルギーコストの高騰が続いており、楽観視はできない状況だ。

同調査は、部工会の会員企業413社のうち、自動車部品の売り上げが50%以上を占める上場企業62社(23年6月時点)を対象に集計した。前年度と、コロナ禍前の18年度を比較対象とした。

サプライヤーの業績を左右する22年度の世界自動車生産台数は、21年度比6.7%増の8350万台だった。4~6月期は中国・上海市でのロックダウン(都市封鎖)や半導体不足で完成車メーカーは稼働調整を迫られたものの、下期(10月~23年3月)にかけて生産が平常化していったことで前年度を上回った。ただ、コロナ禍前の水準には届かず、日本、米国、欧州、中国などの主要地域全てで18年度の生産台数を下回った。

 

部品メーカー62社合計の22年度の売上高は同15.2%増の約28兆円だった。営業利益は同0.9%減の約1兆1100億円とほぼ前年度並みだったが、18年度比では約18.0%減と大幅に落ち込んだ。下期にかけて自動車生産が徐々に回復し、円安による為替効果も出始めたが、上期(4~9月)に発生した生産調整や余剰在庫の増加が業績に響いた。

23年度の部品メーカーの通期業績見通しは、非公表2社を除く60社合計の売上高が22年度比3%増の約28兆4千億円だった。営業利益は約1兆4千億円と22年度から3割以上の増加を見込む。18年度の売上高(約25兆5500億円)、営業利益(約1兆3500億円)ともに上回る見通しだ。60社のうち、22年度比で増収増益を予想する企業は約7割の46社だった。

23年度は、車両生産の正常化に加え、価格転嫁の適正化も進むとみられる。価格転嫁をめぐっては、昨年12月に公正取引委員会がデンソーや豊田自動織機などに対して下請け企業との取引適正化を求める改善要請を出した。政府の介入で「電気代の上昇分などを(供給先に)頼みやすくなった」(中堅部品会社首脳)背景もあり、価格転嫁が進むことを想定して業績予想を立てた企業が多いと思われる。

ただ、ロシアのウクライナ侵攻の影響で原油や電気代は高止まりしており、北米での人件費高騰も経営リスクになっている。その半面、電気自動車(EV)の開発競争の激化で、次世代自動車への投資をこれまで以上に求められる。世界経済の先行きが依然として不透明な中、部品メーカー各社には足元の利益の確保と先行投資の両立がこれまで以上に求められそうだ。

※日刊自動車新聞2023年(令和5年)7月27日号より