【東京】整備士の魅力を伝えるターゲットを「中学生」とし、整備体験などの体験企画を実施する動きが都内の自動車整備専門学校などで広がりつつある。修学旅行における体験学習や職業体験学習などで、自動車整備を体験してもらうのが狙い。地方か地元かを問わず中学生を受け入れることで、整備士のみならず自動車の魅力を波及することに努めている。
読売理工学院(松井敏宏理事長)が運営する読売自動車大学校(渡辺宜男校長)は昨年から、修学旅行などの学校行事で訪れた中学生を受け入れ、体験学習におけるプログラムの一つとして整備体験を実施している。その内容は主に、自動車業界の基礎知識や整備士の仕事などを座学で勉強したのち、ホンダ「スーパーカブ」などの軽量で扱い易いエンジンの分解や組み立てに挑戦するというものだ。
同校が体験企画を実施したきっかけは、岐阜県にある中学校から直接依頼されたこと。今年は旅行代理店を介した依頼も受けることで、中学校を3校ほど受け入れた。同校は、来年度以降も整備士の体験企画を引き続き実施していく方針だ。
一方、小倉学園(小倉基義理事長)東京自動車大学校(小倉基宏校長)は長年、地元の足立区や葛飾区にある中学校で行われている職業体験学習で、中学生を受け入れている。同校は、整備体験だけでなく、教育機関という側面を生かして教育に関する体験プログラムも用意しているので、依頼した学校の要望に合わせた職業体験の実施が可能だ。
中学生に整備の魅力を伝えるメリットとして、ある企画担当者は「小学生では少々ハードルが高いエンジン分解などの整備作業を体験してもらえる」ことをあげる。自動車の魅力に加え、機械いじりの楽しさも伝えることができる。また、修学旅行など学生にとって重大な学校行事で整備を体験してもらうことは、整備の魅力を記憶に留めてもらいやすいという点で大きい。
整備士の体験企画を専門学校で行う最大の強みは「学生に教えるノウハウを持っている」ということ。整備の魅力を体感してもらうだけでなく、自動車業界のことをしっかりと学んでもらう場も設けることで、整備士のみならず自動車業界の現状や魅力を学生に伝えることができる。
「参加した生徒が実際に入学したというケースは非常に稀(まれ)」としながらも「整備士、ひいては自動車業界にまず興味を持ってもらうことが何よりも重要」と企画担当者は力強く話す。コロナが5類に移行したことで移動の制約が大幅に緩和された今、より多くの中学生に整備士の魅力が伝わることが期待される。
※日刊自動車新聞2023年(令和5年)12月20日号より