政府・与党による自動車重量税と自動車取得税のエコカー減税見直し案が明らかになった。「環境インセンティブを強化するため」(総務省・財務省)としながらも、2020年燃費基準の達成度が低いモデルでは増税となり、重量税では年間で総額270億円の増税となる。また、本則税率に上乗せする「当分の間税率」も維持する。制度の延長は実現したものの、自動車税の恒久減税と引き換えに、エコカー減税は事実上、縮小するという形となった。
経済産業省や国土交通省、自動車業界などは19年度の税制改正に向けた要望として、エコカー減税の延長や簡素化、ユーザー負担の軽減を求めていた。今回の見直しによる増収額のうち、国の一般会計の増収の全額を都道府県に譲与し、自動車税の恒久減税にともなう地方の税収減の穴埋めとする。これらの内容は、14日以降にまとめる与党の税制改正大綱に盛り込む。
見直し案によると、重量税では電気自動車や燃料電池車、プラグインハイブリッド車、クリーンディーゼル車、天然ガス車、20年燃費基準+90%達成車の初回と2回目車検時における免税は維持する。一方で、燃費基準+30%達成以下のモデルは初回車検時、ほとんどが増税となる。また、2回目車検では+50~80%達成車の免税措置が撤廃となる。
19年10月の消費増税時に廃止が決まっている取得税では4月から半年間の経過措置として、燃費基準+30%達成以下のモデルで軽減割合が下がる。両税はともに、20年の燃費基準をベースに減税の仕組みを構築している。財務省は免税・減税の対象を「電気自動車等や極めて燃費水準が高いハイブリッド車に限定する」と説明するが、自動車業界や与党国会議員からは「20年という未来の基準を先行達成しているのに増税となるのはおかしい」との声もあがる。
自動車税は、年間1320億円程度の恒久減税を実施することが決まった。地方税の見直しにより約520億円を財源として捻出するが、残る800億円に関しては、エコカー減税の規模縮小や重量税と揮発油税の地方譲与拡大により“税収中立”を確保する考えだ。
地方へ重量税譲与5割
国は、自動車重量税を地方へ譲与する割合を引き上げる。現在、総税収の約4割を地方に譲与しているが、2019年度に「都道府県自動車重量譲与税」制度を新設して、35年度までに段階的に約5割まで引き上げる。19年度の税制改正では自動車税の恒久減税を実施するため、これに伴う地方税減収の一部を重量税の譲与拡大で補填する。
現在の自動車重量譲与税では、年間で約6600億円ある重量税税収のうち3分の1を、特別区を含む市町村に譲与する仕組みとなっている。さらに、当分の間の措置として、1000分の407に譲与割合を引き上げている。総額は18年度計画が2675億円で、使途の条件や制限はない。新設する都道府県自動車重量譲与税は、国から都道府県に譲与するもので、さらに都道府県から市町村に譲渡されることになる。
19年~21年度は1000分の15(年間98億円)、22~33年度は1000分の24(160億円)、34年度は1000分の68(451億円)を上積みし、35年度からは1000分の83(550億円)を譲与する。最終的には1000分の490という譲与割合となる。
※日刊自動車新聞2018年(平成30年)12月13日号より