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自動車業界トピックス

金融庁、ビッグモーターに最も重い行政処分 損保代理店の登録取消は発足以来初

保険部門のリストラが背景に

自動車保険金の不正請求問題を起こしたビッグモーター(和泉伸二社長、東京都多摩市)について、金融庁は30日付で損害保険代理店の登録取り消しを決めた。最も重い処分で、1998年6月の金融監督庁(現金融庁)発足以来初めてという。適正な保険募集を確保するための体制整備ができていないと判断した。この背景には、2020年以降のコロナ禍で中古車の販売台数が大幅に落ちたのを契機に、創業家の兼重宏一前副社長が主導し保険部門の「大リストラ」を行ったことがあったと金融庁は結論付けた。

ビッグモーター本社

金融庁は行政処分に至った理由について、報告をまとめた。16年5月の改正保険業法の施行を受け、顧客に対する情報提供義務、意向把握・確認義務や保険募集人の体制整備義務などが導入されたことで、ビッグモーターの保険業務を行っていた保険部は、17年から「品質向上取組」を開始した。損保からの出向者を大幅に増やすなどし、保険部や各店舗への人員配置を増強した。

しかし、20年以降のコロナ禍の影響で、中古車の販売台数が大幅に減少。これを受け、宏一前副社長の指示で「コストに見合った収益を生まない事業や取り組み」の徹底的な排除が行われていったという。このような実態が保険業法第294条の3第1項(体制整備義務)に違反する、と認定された。

具体的には20年6月に「苦情対応コールセンター事業」を宏一前副社長の判断で廃止した。また、同7月には保険部による各店舗への指導・教育などの取り組みを中止した。その人員を、各店舗の営業支援などに振り分けた結果、23人体制だった保険部は12人に縮小。さらに、同10月に保険部長が辞任した際、経営陣は後任者を配置しなかったという。21年2月には、各店舗内で保険募集の管理指導を行う保険推進委員も廃止したため、保険募集人への組織的な教育・管理・指導が行われない状況となった。

保険契約では122件について、網羅的な重要事項の説明を行っていなかったほか、延べ9人が保険加入を条件に車両価格を値引くなど、保険業法で禁止する特別利益の提供を行っていた。また、121件について下請け業者への圧力で加入させたと判断された。

兼重宏行前社長、息子の宏一前副社長については、直接ヒアリングはできなかったという。

このような代理店としての実態を関東財務局など監督官庁が、見付けられなかったことについて、金融庁は「われわれも(どのように監督していけばいいか)考えないといけない」としている。

※日刊自動車新聞2023年(令和5年)11月27日号より