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自動車業界トピックス

金融庁、自動車保険「過度な便宜供与」の制限へ

3月にも議論スタート 代理店兼業の是非も

問題のある商慣行の是正につなげる(イメージ)

金融庁は、一部の自動車販売会社と損害保険会社の間で横行する「過度な便宜供与」といった商慣習を見直す議論を早ければ3月から始める。「保険代理店の兼業の是非」も話し合う方針だ。金融審議会(事実上金融担当相の諮問機関)か、有識者会議を新設して議論に入る方向で最終調整に入った。

ビッグモーター(和泉伸二社長、東京都多摩市)の自動車保険金の不正請求問題では、修理車を多く紹介してくれた損保に一定数の自動車損害賠償責任(自賠責)保険を割り振るバーター制度が浮き彫りになった。これ自体は違法ではないが、ビッグモーターの工場の整備品質に問題があることを知りながら、損害保険ジャパンが修理車の紹介を続けたことが、保険契約者保護の観点から保険業法上、問題があるとされた。「過度な便宜供与」の一つだ。

この背景には、大手自動車販売会社の大半が保険代理店を兼ねていることがある。過大な保険金請求があっても保険を大量に販売してくれる相手のため、損保側が疑義に目をつぶらざるを得ない実態がある。これは「利益相反状態」だ。

ただ、金融庁は現時点では「兼業禁止」には慎重だ。自動車販売会社は保険販売関連の収入が大きく、禁止すると影響が甚大だからだ。「現時点までの海外の調査では、法律で兼業禁止にしている国はない」(同庁)ともいう。

兼業制度を維持したまま、公正な保険制度を維持するには「過度な便宜供与」を制限する必要があると金融庁は考えている。

保険代理店に対して「過度な便宜供与」(=特別な利益の提供)を禁じる主旨は「保険会社向けの総合的な監督指針」にあるが、より拘束力が強い法令には明記されていない。

ただ、保険業法の第300条では、保険の募集人(代理店など)が契約者に対して保険料の割引など『特別な利益の提供』を禁じている。例えば、ここで「代理店」という言葉を明記し、代理店に対しても『特別な利益の提供』を禁止する法改正につながる可能性もある。この場合は「特別な利益の提供(=過度な便宜供与)」が具体的にどういうものかの議論も重要になる。保険料の割引、割戻が該当することは保険業法には書かれているが、それ以外は明確になっていない。

また、保険業法の第294条では、代理店に対して「体制整備義務」などを課している。この中で「不適切なことを明確にすることも選択肢の一つ」とする専門家もいる。

※日刊自動車新聞2024年(令和6年)2月21日号より