金融庁は、2023事務年度(7月~24年6月)に重点的に取り組む課題をまとめた金融行政方針をこのほど発表した。ビッグモーター(和泉伸二社長、東京都港区)による自動車保険金の不正請求問題で商慣習的に深い関係にあった損害保険業界に対し、「(ビッグモーターなど)保険代理店との適切な関係の構築、管理が必要であることは言うまでもない」と指摘した。その上で「全体像や原因の究明を徹底し、保険契約者の保護に欠ける問題があれば法令に基づき、厳正に対処し、有効な再発防止策を策定する」と語った。
金融庁はビッグモーターと、同社と保険代理店契約を結んでいた損保7社に対して保険業法に基づく報告徴求命令を7月31日付で出している。8月31日が提出期限で、この報告などをもとにビッグモーターと保険業界の関係の実態について調べる方針。
金融庁幹部は、29日時点では報告書の内容がわからないので「現時点での見解」と断った上で、再発防止策としては①(保険業法などの)法改正②保険会社向けの金融庁の監督指針の変更③損保協会のガイドライン作成、申し合わせ、業界の自主的な取り組み、などのやり方が考えられるとした。
その上で「今回の件は、おそらくビッグモータ―固有の問題で(生命保険も含めた保険商品の)代理店・仲介業者の販売制度を大きく見直すことにはならないのではないか」とも語った。
また「この件はもともと日本損害保険協会に情報提供があってそこから始まっているが、ここまで大きな問題になるとは我々も思っていなかった。(対応について)反省する点がないかどうかも考えたい」とした。「大手損保の企業向け共同保険のやり方についても見直すこともあるかもしれない」とも話した。
ビッグモーター問題とは別に損保大手4社は、企業向け共同保険について「事前価格調整」を行っていた疑惑があり、こちらも金融庁から報告徴求命令を受けている。
※日刊自動車新聞2023年(令和5年)8月31日号より