政府による電気自動車(EV)や充電器向けの補助制度が4月から新しくなる。高額車への補助金を2割減額し、軽EVなどへの補助に回すほか、充電器では高出力・複数口充電器への支援を手厚くする。車両、インフラとも量から質へと補助金の支出先をシフトしていく。
2023年度は「クリーンエネルギー自動車(CEV)補助金」に約900億円、「インフラ補助金」に約300億円(このうち175億円がEV充電器)をそれぞれ充てる。
CEV補助金では、EV、軽EV、プラグインハイブリッド車(PHV)、燃料電池車(FCV)が補助対象だ。クリーンディーゼル車は4月から対象外になる。
CEV補助金では、高級車への優遇措置を見直す。従来は車両価格を問わず、一律で補助額を設定していたが、4月からは840万円(消費税別)を超える車両に対して補助金を2割減らす。839万円未満の車両の補助額は変更しない。
減額の対象になるのは、主に海外メーカーの高級EVになると見られる。CEV補助金はもともと、車両購入費用の一部を補助することでEVの普及を広く促すのが目的であり、税金を投じて高級車の販売を支援することを疑問視する声も寄せられていた。
減額した分は、軽EVなどの補助に回したい意向だ。日本自動車販売協会連合会と全国軽自動車協会連合会の発表によると、2月は国内におけるEV新車販売のうち約7割を軽EVが占めた。今年度は、CEV補助金の当初予算が年末に底をついた。2次補正予算で財源を手当てしたものの、販売現場は登録・届け出時期をずらすなどの対応を検討した。経済産業省としては販売現場が再び混乱しないよう万全を期す構えだ。
インフラ補助金では、EV用充電器の補助制度を拡充する。力を入れるのは、公共急速充電器の「複数口化」と「高出力化」だ。現在、普及している急速充電器は出力が20~50㌔㍗のものが多く、充電の接続口も「1基1口」が中心だ。このため、週末などには一部の充電器では充電待ちが起きている。
経産省は、高速道路のサービスエリア(SA)やディーラーなどで90㌔㍗を超える急速充電器の導入がこれから進むと見込んでおり「1基6口」などの複数口化と合わせて導入を促進していく。
急速充電器向けでは、SAで1基6口以上の充電器を設置する際の補助上限額を現行の3100万円から2倍の6200万円に増やすほか、EVトラックの普及を見据え、高圧受電設備の補助枠も拡充する。ディーラーなどに設置する90㌔㍗以上の急速充電器に対しても、工事補助額の上限を現行の2倍の280万円まで増やす。
EV向けインフラ補助金は、過去に12年度補正で約1千億円、14年度補正で約300億円をそれぞれ確保したことがある。今回の約175億円は、予算ベースでこれらの年度に次ぐ規模となる。経産省によると、充電の接続口換算で1万口以上を支援できる見通しだ。予算の拡充で、政府目標である30年に充電インフラ網15万基(このうち急速充電器は3万基)の達成に弾みをつける。
※日刊自動車新聞2023年(令和5年)3月14日号より