先進7カ国(G7)による気候・エネルギー・環境大臣会合が、15、16の2日間、札幌市で開かれる。製鉄分野などで、ライフサイクルアセスメント(LCA)視点で排出された二酸化炭素(CO2)の算出手法の国際連携を目指す。一方、日本は石炭火力発電の廃止時期を明示するよう水面下で求められており、どこまで成果文書に盛り込まれるかも焦点になりそうだ。
5月に広島市で開かれるG7広島サミットを前に、G7札幌では経済産業相、環境相らが出席し、気候変動やエネルギー分野の脱炭素化について議論する。ロシアのウクライナ侵攻による足元のエネルギー危機と「2050年カーボンニュートラル(温室効果ガス実質排出ゼロ)実現」の両立を前提に各国で方針を共有する見込みだ。
G7議長国である日本は、生産や製品におけるCO2削減ルールのグローバルスタンダード構築を目指す。鉄鋼分野では、製造工程でCO2を排出しない「グリーンスチール」の定義などを決め、早期の普及を図る。
製鉄においては、鉄鉱石を高炉で熱処理する工程で大量のCO2を排出する。鉄鋼分野におけるCO2排出量は、日本では全体の約12%、世界では約25%を占める。50年目標の実現に向け、鉄鋼各社は生産プロセスの転換を迫られており、日本製鉄は高炉で使用する石炭の一部を水素やメタンに代替する「水素還元製鉄法」の実用化を急ぐ。神戸製鋼所は昨年、低CO2高炉鋼材を商品化した。
ただ、今回のG7札幌では、石炭火力をめぐって日本への風当たりが強まりそうだ。昨年、ベルリンで開かれたG7気候・エネルギー・環境大臣会合では、議長国であるドイツが石炭火力発電の「30年までの段階的に廃止」を成果文書に盛り込みたい意向だったが、日本が反対し「段階的に廃止」という表現にとどまった。日本は引き続き、水素などを活用して石炭火力での脱炭素化の道を探りたい考えで、廃止時期の明示をめぐる議論が再燃しそうだ。
電気自動車(EV)では、モーター用の電磁鋼板や、車体の軽量化に適していると言われるハイテン材の採用率が高まることが見込まれる。鉄鋼分野の施策や方針は自動車のLCA視点での脱炭素化にも関わってくるだけに、札幌での議論が注目されそうだ。
※日刊自動車新聞2023年(令和5年)4月12日号より