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自動車業界トピックス

AICE、2027年度までにHVのCO2排出量を半減

大型ディーゼルエンジンは25%減

エンジン開発を通じて世界的に人気のHVの競争力を高める

自動車用内燃機関技術共同組合(AICE)は、現行のハイブリッド車(HV)比で二酸化炭素(CO)排出量を半減させる内燃機関の技術を2027年度までに確立させる。エンジンの熱効率向上などの開発を通じて実現を目指す。大型商用車用ディーゼルエンジン(DE)でも、最高熱効率55%以上を達成することでCO排出量を現状より25%以上減らす技術を開発する。HVの販売好調など、世界的に内燃機関車が見直される中、AICEでは内燃機関の基礎技術を底上げすることで日本メーカーのさらなる競争力向上につなげていく狙いだ。

AICEは、産学連携で内燃機関の要素技術の研究を進めており、HVと大型DEの研究開発は、新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)の「グリーンイノベーション基金」事業の「燃料利用技術の向上に係る技術開発」として、27年度までの6年間で達成を

上原理事長

目指している。一連の研究の事業規模は45億円で、NEDOが30億円を支援する。

HVのCO半減に向けた取り組みでは、エンジンの熱効率向上で37.8%超、外部情報活用による効率的なパワートレイン制御や軽量化など車両全体での効率化で10.6%超、エンジンの効率的な運転などによる平均熱効率向上で3.2%を削減する。さらに合成燃料を用いて、HVシステムと組み合わせることでCO排出の大幅な削減につなげていく考えだ。

すでにシミュレーション上では、排気量1.5㍑の直列3気筒エンジンをプレチャンバーを用いたリーンバーン(希薄燃焼)とすることで、熱効率を53%超まで高められるとの結果を得た。これにHVシステムを組み合わせることで、大幅なCO削減を図っていく。今年下旬には石油元売り大手のENEOS(エネオス)から合成燃料の提供を受け、燃焼評価を始める予定だ。

大型DEの開発では、高過給・高膨張比燃焼の実現などでエンジンの最高熱効率を55%以上まで高めることでCOを25%超削減する。そのほかにも外部情報活用のパワートレイン制御や電動化以外の手法の開発なども行っていく。

AICEは、独の内燃機関に関する研究コンソーシアム「FVV」を手本として14年に設立。トヨタ自動車や日産自動車、ホンダなど自動車メーカー9社と日本自動車研究所、産業技術総合研究所が組合員だ。産学連携の研究開発のほか人材育成にも取り組んでいる。

5月には新たにトヨタの上原隆史パワートレーンカンパニープレジデントが理事長に就いた。上原理事長は「変化する社会動向や産学官の期待に応えられる姿を目指す。日本の技術力強化と発展、次世代人材の育成に貢献していく」と創立10周年記念式典で語った。

※日刊自動車新聞2024年(令和6年)5月23日号より