MS&ADインシュアランスグループホールディングス(HD)の原典之社長は、傘下の中核損害保険会社である三井住友海上火災保険と、あいおいニッセイ同和損害保険の2社の統合について「選択肢として合併は持っている」との考えを示した。ただ、「今は2社の共通化作業を進めている」とし、統合の時期については明確にしなかった。また、「長すぎる」と指摘されることが多い、グループ名については中核損保2社の再編の機会と併せて変更する可能性を示唆した。
MS&AD HDの次期社長に三井住友海上の舩曵真一郎社長が昇格することを発表した4月26日の会見で、原社長が明らかにした。傘下2社の統合について、原社長は合併の選択肢があることを示しつつ、「今は『1(ワン)プラットフォーム戦略』をまずやっていこうというのをグループとして考えている」とした。
その中で「グループの名称も含め、どういった在り方がいいのか、検討課題だ」とも述べた。現社名について原社長は、「確かに長いし、ローマ字やカタカナが入っていて、なじみの点で分かりづらいという意見をよくいただく」との認識も示した。
「1プラットフォーム戦略」は、中期経営計画(2022~25年)に盛り込まれている。2社について、①事務の集約化②損害サービスシステムの統合③商品共通化―が柱になっている。原社長によると、顧客からの問い合わせなどを受け付ける「コンタクトセンター」や資産運用などでも共通化も進めているという。6月にMS&AD HDの社長に就任する舩曵氏も「選択肢として合併はある」としながらも、時期についてはあいまいな言い方にとどめた。
大手損保3グループの中で、傘下に中核の損保会社2社を持つのはMS&AD HDのみ。グループ戦略の重要性も理解しつつも、三井住友海上とあいおいニッセイ同和損保はそれぞれ、人材採用を独自に行うなどグループ内で埋没を避けようとする面もある。このため、外部からはシナジーが出ていないのではないか、などの指摘がある。
合併の課題の一つには、収益力の差があるとみられている。24年3月期の決算予想では、三井住友海上は正味収入保険料1兆6160億円に対し、純利益は1350億円で利益率は8.3%を見込む。これに対し、あいおいニッセイ同和損保は正味収入保険料1兆3630億円で純利益が560億円。利益率は4.1%と離されており、この差を縮めることも今後のグループ戦略を進める上で重要になりそうだ。
(小山田 研慈)
※日刊自動車新聞2024年(令和6年)5月1日号より