半導体受託製造(ファウンドリー)世界最大手の台湾積体電路製造(TSMC)は24日、熊本県菊陽町に建設した第1工場の開所式を開いた。TSMCにとって日本初となる工場で、12~28㌨㍍(1㌨は10億分の1)世代の半導体チップを今年末から製造する予定。高性能半導体を国内で安定調達できる体制が整うことから、車載先端半導体の開発や普及にも追い風となりそうだ。
熊本第1工場はTSMCが過半数を出資し、ソニーセミコンダクタソリューションズ、デンソーも出資して設立した「ジャパンアドバンスドセミコンダクターマニュファクチャリング(JASM)」が22年4月に着工した。約1700人を雇用する予定で、生産能力は300㍉㍍ウエハー換算で月間5万5千枚。
設備投資額は約1兆円で、このうち政府が補助金として最大4760億円を拠出することを決めている。今後、製造設備を順次導入して年末までに稼働する。
開所式にはTSMC創業者の張忠謀氏、劉徳音会長、魏哲家CEO(最高経営責任者)や、斎藤健経済産業大臣らが出席した。JASMが27年末までに6㌨世代の半導体を製造する第2工場の新設を決めたのに伴い、トヨタ自動車もJASMに出資したことから、トヨタの豊田章男会長が出席するなど、自動車業界でも先端半導体工場の国内稼働に期待が高まっている。
現在、国内で生産されている最も微細化したロジック半導体は40㌨世代にとどまる。車載用半導体は世代の古いレガシー半導体が一般的だが、TSMC熊本工場の稼働を契機に先端半導体を活用した高度な自動運転や先進運転支援システムなどを実装する動きが広がる可能性もある。
TSMCは、第1工場の竣工式直前の今月6日、300㍉㍍ウエハー換算で月間4万5千枚の生産能力を持つ熊本第2工場を年内に着工することを正式に決定した。自動車や民生機器、高性能コンピューター向けに6㌨に加えて、12㌨、22㌨、40㌨世代の半導体を生産する。
第1工場はほぼスケジュール通り建設が進んだ。TSMCの熊本進出に伴い、半導体材料メーカーや半導体製造装置メーカーが九州地方に相次いで進出するなど、半導体製造拠点を運営する環境が整ってきた。さらに地元の熊本大学など、半導体人材の育成が進んでいることもTSMCは評価した。国内を含め、グローバルで拡大する半導体チップの需要に対応するため、TSMCは熊本第3工場の建設も視野に入れている。
※日刊自動車新聞2024年(令和6年)2月26日号より