全米自動車労働組合(UAW)によるストライキ影響はサプライヤー各社の業績にも及んだ。デンソーやブリヂストン、帝人などで生産停止による業績影響が出た。日系向けなどの取引が好調なこともあって影響は軽微だが、来年以降は人件費が一段と上昇する恐れもある。
UAWの3社一斉ストは9月15日に始まり、対象拠点を徐々に増やしながら最終的に4万人以上の組合員が参加した。結局、10月30日のゼネラル・モーターズ(GM)と暫定合意に至るまでの約1カ月半にわたり続き、各社は3割前後の賃上げを迫られた。 米国自動車部品工業会は、ストによる生産影響で会員企業の約3割が一部の従業員を解雇したことを10月上旬に明らかにした。
帝人は、スト影響などで今期のグループ全体の売上見通しを200億円下方修正した。特に複合成形材料事業では、「対象は極めて限定的」(同社)ながら、一部拠点で3~5割の従業員を一時解雇した。内川哲茂社長CEOはスト明けの生産回復時に「一定程度、生産の混乱が想定される」とも語った。
アルプスアルパインも、グループ売上高の半分を占めるモジュール・システム事業について「大半のカテゴリーで米国の顧客に供給しており、売り上げと営業利益に影響した」(小平哲取締役専務CFO)。現地では労使交渉が11月末までずれ込むことも想定していたという。ブリヂストンは「第4四半期(23年10~12月期)に影響が出てくる。年間の営業利益で数億円レベル」(石橋秀一グローバルCEO)と見通す。デンソーもスト影響により100億円程度の売上減を見込む。松井靖副社長は「予断は許さないが、あまり大きな影響ではない」と話した。
ただ、好待遇で決着した「ビッグスリー」の賃金水準が自動車業界に波及する可能性は高く、豊田合成の齋藤克巳社長は「将来的には人件費が上がっていくことは間違いない」とにらむ。
UAWは、非加盟のトヨタ自動車やテスラなどでの労組立ち上げも目指している。日系サプライヤー各社は従業員とのコミュニケーションを密にする一方、製造設備の自動化など、省人化に向けた取り組みを加速させる。
※日刊自動車新聞2023年(令和5年)11月14日号より