入学者減少のペースは緩んだものの、教育機関の抱える課題は未だ山積―。日刊自動車新聞社は自動車大学校・整備専門学校を対象に今春、アンケート調査を実施した。入学者数が「減少した」との回答は、過半数超えだった前年から25ポイント減少し35%となり、改善の様子がみられた。主な要因は留学生で今回、留学生が「増加した」とした学校は57%。学生確保では、留学生を含めると今後の明るい兆しが見えた。ただ、整備士資格の確実な取得や次世代自動車対応に向けた教育カリキュラム改定、教員の育成など多数の課題が存在、その解決にも追われている様子が浮かび上がった。
同調査は、全国の自動車大学校・整備専門学校75校を対象に3月にアンケート調査を実施、49校(65.3%)から有効回答を得た。
自動車大学校・整備専門学校の入学者数はここ数年減少が続いている。「整備白書」では2018年度の入学者数が学校全体の定員1万2674人に対し、8124人となり定員の7割に満たなかったことが示された。こうした状況が整備士不足に影響を及ぼしている。
学生の就職では“売り手市場”が続いている。今回の調査では「学生の8割が就職内定をもらった時期」で最も多かったのが「5月」で、回答校の35%が「就職が決まる時期が早まっている」とした。
学生の募集活動のうち、学校説明会などの開催先では「普通高校」が39.2%、「工業系高校」が38.3%となり、募集校の間口を広げている状況がうかがえた。
また、学校訪問だけでなく「企業とタイアップしたイベントの開催」(北海道・整備専門学校)や「SNS(ソーシャル・ネットワーキング・サービス)を利用したPR活動」(福岡・整備専門学校)、「奨学金制度の充実を図っている」(埼玉・自動車大学校)など“あの手この手”で学生の興味を惹きつけるための努力が見られた。
一方、年々増えてきた留学生について「増加した」が6割弱と過半数を占めた。出身国はベトナムとスリランカが最も多く、次いでネパール、中国の順だった。
卒業後の進路については「ディーラー」「国内(日本)での就職」が大多数を占め、「仕事に取り組む積極性がある」「モチベーションが高い」と意欲を持った留学生が増えたことで就職にも結びついた様子が垣間見えた。
しかし3割弱の学校が「日本語能力が不足している」ことが課題と指摘。整備士資格を取得してもらう上で大きな壁となっている。
いくつかの学校は通常2年制の2級整備士課程を3年制に変更して日本語教育やノンバーバル(言葉を用いない)な日本文化を学ぶ機会を設けるなど、対策を講じた。
その一方、次世代自動車の教育については、教材に「スキャンツールと電気自動車を導入した」(埼玉・自動車大学校)や「新技術を掲載した教科書を追加した」(東京・整備専門学校)、「運転支援技術の搭載車を購入した」(大阪・整備専門学校)など教材を充実した事例が多数あり、新技術への対応は着実に進んでいるようだ。
新たな課題として浮上したのが「教員不足」の懸念だ。「教員の高齢化が進んでいる」(メーカー系自動車大学校)や「一級課程に対応できる教員が足りない」(関東圏の整備専門学校)との声が挙がっている。今後は学生数の減少に加え、教育側の人材不足が進むことが予想される。
自動車業界が変革期を迎える中、整備業界も整備士に必要とされるスキルの見直しや、外国人材が活躍しやすい職場づくりなど、経営環境の変化に合わせた対応が必須になった。これからも「整備士」という職業が、自動車社会にとって必要不可欠な存在であることには変わりない。持続的な発展に向けて、若い世代に整備士の魅力浸透を図る学校づくりが急がれる。
※日刊自動車新聞2019年(平成31年)4月22日号より