レースゲームと言えば「グランツーリスモ」(ソニー・インタラクティブエンタテインメント)が有名だが「たかがゲーム」と侮れなくなってきた。トヨタ自動車やトムスなどが「eモータースポーツ」として力を入れ始めたのだ。
トヨタはグランツーリスモスポーツ上で「GRスープラGTカップ」を開催中。国際自動車連盟(FIA)公認のオンライン選手権への協賛も始めた。世界700万人とされる愛好家へGRブランドを売り込むほか、集めたデータを車両開発にも活かす。「ゲームの水泳やサッカーがいくら上手くても実際にできるとは限らないが、シミュレーターで速い人は実車でも速いという結果が出ている。eモータースポーツを一過性のブームに終わらせないよう取り組む」と担当者は力を込める。
トムスはモータースポーツシミュレーションの開発を始めた。免許や資金力がなくても気軽に参加できるシミュレーションゲームの参加者を増やし、モータースポーツやカスタマイズ(合法改造)の愛好家を増やすのが狙いだ。谷本勲社長は「業界で協力して取り組みたい」と語る。
国内の新車ディーラーでもドライビングシミュレーターを導入し、サーキット走行を楽しんでもらったり、衝突被害軽減ブレーキを疑似体験してもらうなどの動きが出始めた。ある導入店でシミュレーターを体験した男性は「ゲーム機のようなものかと思っていたが、実際の運転感覚に近い」と驚いた様子だ。
仮想現実(VR)や人工知能(AI)などの新技術を取り込み、バーチャルとリアルの垣根は今後も一層低くなっていく。自動車市場の活性化やモータースポーツ文化の発展にもつながるeモータースポーツへの注目度が高まりそうだ。
※日刊自動車新聞2019年(令和元年)6月20日号より