確実にモチベーションアップ
自動車メーカーが取り組むモータースポーツ活動は、まさにプライドと威信をかけた負けられない戦いだ。巨額の資金と優秀な人材を投入し、ライバルよりもコンマ1秒でも速いマシン開発が至上命題となっている。
日系メーカーが参戦する世界選手権は多岐にわたる。四輪ではトヨタ自動車が世界耐久選手権と世界ラリー選手権、ホンダがF1、日産自動車が電気自動車のフォーミュラレースであるフォーミュラEに参戦中。二輪ではスズキとヤマハ発動機がモトGPに挑戦している。
国内外のレースカテゴリーでは熾烈な競争関係にある各社だが、昨今は協調領域としてファンづくりに取り組むケースも増えている。今年3月に鈴鹿サーキットで開催したファン感謝イベント「モースポフェス2019SUZUKA」はその最たる例。トヨタとホンダ、モビリティランドの3社がタッグを組み、モータースポーツの活性化とクルマファンの増大などを目的に開催した。こうしたイベントはメーカー単独で実施するのが通例だった。今年、メーカーの垣根を越えて共催イベントに乗り出したことで、今後は自動車業界全体としてモータースポーツを盛り上げる機運が高まることが期待されている。
近年、顕著な動きを見せているのが新車ディーラーによるモータースポーツへの挑戦だ。国内最高峰のGTレース、スーパーGT(GT300クラス)では大阪トヨペットが「LMcorsa」、岡山トヨペットが「K―tunesRacing」、埼玉トヨペットが「Green Brave」として参戦しており、K―tunesRacingは開幕戦と第3戦で優勝を飾っている。また、GAZOORacing86/BRZレースを筆頭に、ワンメークレースなど草の根レースへの参戦も活発だ。ディーラーがモータースポーツ活動に取り組む主要な目的は、メカニックのモチベーションアップと育成、リクルート支援にある。ディーラーメカニックにとってモータースポーツは憧れの現場であり、その夢舞台を用意することで業務に対するやる気創出、会社へのロイヤリティーアップにもつなげる狙いだ。
離職防止、リクルート支援も
リクルート活動への貢献も大きい。整備業界全体でメカニック不足が深刻化する中、レースをやっている会社だから入社したいと志望動機を語る学生が増えているという。
学生が会社を選ぶ上でモータースポーツ活動が有利に働く状況となっている。
モータースポーツ振興に向けて行政の動きも活発になっている。東京都の小池百合子知事は1月、フォーミュラEの誘致を調査すると発表。2月には大阪市の吉村洋文市長(当時)がF1誘致構想を表明した。チームや関係者、そして多くの観客が訪れ、地元にお金を落とす経済効果は大きい。地域経済の発展、知名度アップも含め、モータースポーツへの期待はますます大きくなりそうだ。
※日刊自動車新聞2019年(令和元年)6月20日号より