Q フォーミュラEってどういう競技なの?
A 簡単に言うと、電気自動車(EV)のフォーミュラカー(レース専用車)を用いたレースの名称です。2014年に第1回大会が開催され、今年で10シーズン目を迎えました。国際自動車連盟(FIA)公認の国際競技としてはフォーミュラワン(F1)が有名ですが、フォーミュラEも今はFIAが統括しています。エンジン車のような騒音が出ないため、従来のサーキットではなく、市街地やリゾートで開かれることが多いことも特徴です。今では年間10戦程度が行われています。

Q 今年、東京大会が日本で初めて開催されたようだね。10年目で初開催って遅いように感じるけど…。
A 東京大会は東京都の誘致で実現しました。フォーミュラEの誘致に向けた動きは以前からありましたが、日本は公道レースへのハードルが高いこともあり、なかなか誘致決定にまで至らなかったと聞きます。今回は東京・お台場の一部エリアに特設コースを設けました。EVへの注目が高まる中で、脱炭素機運をさらに高める役割を果たしたのではないでしょうか。
Q 東京大会ってどんなルールで行われたの?
A 「TOKYO E PRIX(東京Eプリ)」の名称で開かれた今大会は、全16戦中の第5戦目でした。1周2.582㌔㍍、3つの直線コースと18カ所のコーナーがあるコースを、11チーム22台のマシンが激走しました。通常出力に50㌔㍗(約68馬力)追加した、最大出力350㌔㍗(約476馬力)で走る「アタックモード」など、フォーミュラE独自のルールもあります。
Q EVレースの勝敗ってどこでつくの?
A 速さはもちろん、バッテリーマネジメントが重要になってきます。東京Eプリの決勝では、中盤まで首位だった日産自動車のマシンが2位に順位を落とし、そのままゴールしました。これは電池残量を持たせるため、わざと走行ペースを落とすという作戦の一環だったそうです。競輪競技などのように、先頭車両は空気抵抗の影響を大きく受けるため電池を消耗しやすく、あえて後続に下がることで、バッテリーを終盤まで持たせる算段でした。残念ながらゴール間際で逆転することはできなかったのですが、この駆け引きは見応えがありました。

Q で、レースは盛り上がったの?
A 大人1万2千円、最上位では8万4500円もしたチケットは追加分を含め、売り出し後に即完売するなど、開催前から関心を集めていました。実際に観戦しましたが、とにかく「静か」の一言に尽きます。F1の爆音もそれはそれで迫力がありますが、騒音問題を考えると、フォーミュラEの方に興行的な可能性も感じます。観客を飽きさせないよう工夫も凝らしており、1対1でタイムを競う「デュエル」は、航続距離よりスピード対決となり、かなり盛り上がりました。ただ、コースが狭く、F1のようにオーバーテイク(追い越し)で手に汗握るような展開は少なかったように感じました。レース好きの来場者の中には「物足りなかった」という声もあったようです。
Q 日本メーカーは出ているの?
A 今大会は日産のみの参戦となりました。日産は今後も継続して参戦する方針です。また、ヤマハ発動機も、英国ローラカーズと組んで参入予定です。ローラが25年に供給を見込む車体向けに、モーターとインバーター、エネルギー制御ソフトを開発します。次世代技術・製品を先行して導入するレースは「走る実験場」と言われています。すでにハイブリッド機構やカーボンニュートラル(温室効果ガス排出実質ゼロ)燃料などは他のレースにも積極的に取り入れられています。EVで競うフォーミュラEも、これから参入する企業が増えていくのではないでしょうか。
※日刊自動車新聞2024年(令和6年)5月7日号より