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〈ニュース知ったかぶり!?〉日本版ライドシェア、海外との違いは?→タクシー不足補完が前提 地域、時期、時間帯…多くの制限付き

Q 4月から東京都などで「日本版ライドシェア」が始まったね?

A そうですね。正式には「自家用車活用事業」と言います。行政のデジタル化や規制緩和を議論する「デジタル行財政改革会議」(議長は岸田文雄首相)で2023年12月20日に決定された中間とりまとめを踏まえ、国土交通省が道路運送車両法第78条第3号に基づき新たに創設した制度です。

Q 「日本版」ということは海外と何か違うのかな?

A 海外と異なる点の一つは、事業の実施主体を今のところタクシー事業者に限定していることです。国交省から認可を得たタクシー事業者が、地域の自家用車や一般ドライバーを活用して有償運送サービスを行います。新制度は「タクシー不足を補う」ことが前提です。このため、タクシーが不足している地域や時期、時間帯に限ってサービスができます。これも国交省が決めています。海外と比べると制限が多くなっていますね。

Q 具体的に、実施できる地域や時間帯はどうやって決めているの?

A まず、配車アプリ事業者のデータを基に、タクシーが不足する地域、曜日、時間帯と不足車両数を割り出します。不足する車両数は、配車依頼に対する承諾率(マッチング率)で90%を確保するために必要な車両数で、言い換えれば、タクシー事業者が対象地域で活用できる自家用車の数です。

さらにそこから、自家用車活用事業の認可を受けたタクシー事業者ごとに、対象地域を走るタクシーなど事業用自動車数の範囲内を上限として許可台数を割り振ります。一般ドライバーの自家用車に加え、タクシー事業者の遊休車両(タクシー、営業車両)やレンタカーも利用可能です。

日本では「タクシー不足を補う」という理由で始まる

Q タクシー事業者が自家用車活用事業を行うために必要な要件は何があるの?

A 自家用車の運行管理と整備管理の責任を負うほか、一般ドライバーに対して研修・教育を実施する体制を整える必要があります。本業を持つ一般ドライバーが副業で行う場合には、パートやアルバイトとしての雇用が想定されます。安全を確保する狙いから、こうした人たちがきちんと睡眠や休息を取っているか把握することも必要です。また、タクシー車両と同じように「対人8千万円以上、対物200万円以上」の任意保険をかける必要もあります。

Q 車両の整備管理は具体的にどのような内容なの?

A まずは自家用車活用事業を実施する前に「開始前点検」を行う必要があります。以降は、運行するたびに「運行前点検」、3カ月ごとに「中間点検」、12カ月ごとに「年次点検」を行います。安全確保のため、自家用車でも原則としてタクシー車両と同等の点検整備が必要です。ただし、運行頻度によっては、次回の中間点検で実施しなくてもよい項目がいくつかあります。

Q ユーザー側は、サービスを利用するにはどうしたらいいのかな?

A 基本的には、タクシー配車アプリを通じて近くの車両検索や配車予約、事前の発着地確定などを行うことになります。法律上は、利用者とタクシー事業者が運送契約を結ぶ形で、トラブルや事故などの責任はタクシー事業者が負います。運賃・料金はタクシー事業者の「事前確定運賃制度」に準じ、キャッシュレス決済を原則とします。

Q 一般ドライバーと利用者の相互評価やダイナミックプライシングの仕組みは?

A 相互評価の導入については、タクシー事業者や配車アプリ事業者の判断に委ねられます。ダイナミックプライシングについては、自家用車活用事業がタクシー事業の補完という位置づけであることや、利用者の需要が抑えられることがないよう、導入を想定していません。ただ、公共交通機関が乏しい地域の「自家用有償旅客運送」では、通常運賃から最大5割、増減できるようになります。柔軟な価格により、利用者を増やしたり、採算を確保しやすくするのが狙いです。

Q 将来的にタクシー事業者以外の企業参入や一般ドライバーへの業務委託といった「ライドシェア全面解禁」はあるのかな?

A 国交省は、運行管理や車両整備などの責任を負う主体を置かないまま自家用車のドライバーのみが運送責任を負う形態の運送サービスは「安全の確保や利用者の保護などの観点から問題がある」との立場を崩していません。「事故が起こった際の責任や適切な労働条件も重要」と主張しています。タクシー事業者以外の企業がライドシェアを行う法制度については、自家用車活用事業や自家用有償旅客運送制度の改革などの実施効果を検証した上で、6月に向けて議論することとしています。ただ、ライドシェアは官民の規制緩和派や慎重派、業界団体などの思惑が錯綜し、さまざまな駆け引きが繰り広げられており、効果検証が短期間でできるかどうかも含め、先行きはなお混沌(こんとん)としているのが実態です。

※日刊自動車新聞2024年(令和6年)4月30日号より