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整備機器各社 “つながる工具”開発に挑戦

工具メーカー各社が“つながる工具”の開発に挑んでいる。人手不足の中、点検記録の自動化など生産性向上につながるほか、運転支援技術の普及に伴い、訴訟などに備えて作業記録を残しておく必要性が高まりつつあるからだ。ただ、足元の必要性はさほど高くなく「小規模な整備工場などはどこまでコストをかけられるか分からない」(TONE)との声も。今後は技術の進化やコスト、工場側のニーズを見極めながら製品化を探ることになりそうだ。

京都機械工具(KTC)は昨年、「TRASAS(トレサス)」シリーズを発売した。測定具と作業支援デバイス、ソフトウエアがセットになっており、測定具を工具に付けて作業すると、トルク値などの測定データが無線でパソコンやスマートフォンに転送される仕組み。記録作業が自動化できるほか、誰がどの作業をしたかの管理もできる。測定具は汎用性が高く、手持ちの工具に装着して使える点も特徴だ。

整備機器各社“つながる工具”開発に挑戦(京都機械工具のトレサスシリーズ)

同社はデジタルトルクツール「デジラチェ」を扱う。デジラチェの発売後、「記録を残したい」という要望が多く寄せられたため、2012年に記録機能を加えた。トレサスシリーズの発売で、締め付けトルクのほかタイヤの残溝やブレーキパッド残量なども自動記録できるようになる。同社は「自動運転の普及に伴い、事故発生時のために安全性を担保する必要性が高まる。信頼性の観点から、正確な整備記録を残すのは重要だ」(次世代開発本部事業開発室)と話す。
空研(中川禎之社長、大阪府羽曳野市)は「トルク管理をしたい」というタイヤショップなどからの要望に応え、エアー式トルク制御型ナットランナー「PTS―800ESL―R+PTS―IST」を昨年9月から発売した。センターハブに装着した表示器が無線通信の情報をもとに締め付け順や締め付け済みのナットをランプで示すため、作業ミスが減る。同社は「地域によって使える周波数帯が異なるので開発は簡単ではない」(営業部)と課題を指摘しつつも、こうした通信型工具の開発を進める予定だ。
もっとも、現時点でこうした工具は必須ではない上、通常の工具より割高になる。TONEは「新しい製品群なのですぐに買い手が見つかるわけではない」(営業企画部業務企画課)と長期戦を覚悟し、データを無線でやりとりする機能よりトルク管理などの機能をまずは充実させる考え。同社の「ラチェットデジトルク」は、測定トルクをUSBケーブルでパソコンにデータ転送できる。
ただ、高度な運転支援技術は急ピッチで開発が進む。政府はレベル3(加減速・操舵をシステムが担い、動作継続が困難な場合は運転者が対応)の車両を20年度までに高速道路上で実用化する方針。一部でも運転操作を車両側が担うため、損保関連会社の幹部は「エーミング(機能調整)は必須だし、作業結果も保存させる必要がある」と話す。エーミングの有無や測定値を第三者的に預かり、作業クレームに備えるサービスも始まっている。20年度が近づくに連れ、つながる工具も増えていきそうだ。

※日刊自動車新聞2019年(平成31年)1月25日号より