地球環境問題を背景に自動車の燃費性能や二酸化炭素(CO2)排出量に対する規制が厳しくなっています。自動車メーカーが車両開発において軽量化を推し進めるのは、主にこうした世界的な環境規制に対応しなければならないからです。
現在、低炭素社会の実現に向けてハイブリッド車やプラグインハイブリッド車、電気自動車などの電動車の普及が進んでいますが、一方で、これらの電動車は重いバッテリーを搭載するため電動化による燃費改善効果の一部を減らすことにもなると言われています。また近年は、先進運転支援システムなど安全装備の採用が増えていることも車両重量増の要因となっています。車重が増えると燃料消費量が増え燃費は悪化します。
軽量化することは燃費向上の観点から非常に有効な手段となるわけです。
軽量化には超高張力鋼板やアルミニウム、マグネシウム、CFRP(炭素繊維強化プラスチック)、樹脂などの素材を採用するケースが増えています。
同時に複数の素材を組み合わせて軽量化とコストの両立を図る自動車材料のマルチマテリアル化が重要になりました。これを実現するため異種材料接合技術の開発が進んでいます。
自動車用素材は軽量化が求められる一方で、衝突時の乗員保護や操縦安定性を高める観点などから剛性と強度も必要となります。また、コストに対する要請もバランスさせる必要があるのです。
クルマの軽量化については国も技術向上を後押ししています。環境省は鉄鋼の5分の1の軽さで5倍以上の強度を持つセルロースナノファイバーの社会実装を推進しており、クルマの内装材や外板への採用に向けた実証を進めているところです。
経済産業省は「自動車新時代戦略会議」でまとめた中間整理の中で素材の軽量化について言及。産学官連携や企業の壁を越えたオープンイノベーションによって、次世代電動化技術を世界に先駆け早期に実用化し、生産性の向上を実現すると強調しています。
※日刊自動車新聞2020年(令和2年)5月12日号より