トラックによる貨物輸送量は年々増加傾向となっています。2018年度の宅配便取扱個数(航空など利用運送を含む)は過去最高の43億701万個で、前年度と比較して1.3%(5568万個)の増加となりました。インターネット通販の利用者が急増し、EC(電子商取引)市場が拡大しているためです。
一方、トラックドライバーの労働環境が問題になっています。原因の一つとして挙げられるのが、拘束時間の長さです。トラック輸送では荷主に指定された時間に荷物を届けなければならず、特に移動距離が長い長距離ドライバーは道路事情などで必然的に勤務時間が長くなってしまいます。こうした現状から、トラックドライバーの業務は過酷だというイメージがつき、若い世代の労働力を取り込めず、ドライバー不足が深刻化するという悪循環が起きています。
このような状況を打破するための施策として期待されているのが「ロジスティクス4.0」という考え方です。ロジスティクス4.0とは、ITやIoT(モノのインターネット)、AI(人工知能)を活用することで、これまで人が担っていた作業を自動運転技術や無人搬送機(AGV)などのロボットが代行し、省人・省力化を図るものです。
ロジスティクス4.0により、モノとインターネットがつながることでリアルタイムでの情報共有が可能となります。例えば、トラックの荷室に積まれた荷物の量をリアルタイムで計測し、荷室に空きのあるトラックを減らすという仕組みづくりが進んでいます。これにより、トラック1台当たりの稼働率の向上につなげる考えです。加えて、配送ルートを決める際に、AIを活用することで、それぞれの荷物を配送するために最適なルートを自動的に選び出すシステムの利用も始まっています。
こうした物流の効率化に向けた取り組みを進めるため、物流企業をはじめ国や商用車メーカーなどが協働し、物流分野における新しいサービスとしてのモビリティ「物流MaaS」の実現を目指しています。
※日刊自動車新聞2020年(令和2年)5月22日号より