消費行動の多様化が進む中、自動車に対する価値観も変化しています。その中でも自分専用の自動車を「所有」することにこだわらず、使いたい時にだけ「利用」したいと考える人が多くなっています。レンタカーやカーシェアリングなど、気軽に自動車を借りられるサービスも増え、こうした需要はさらに拡大すると見込まれています。自動車メーカーや系列ディーラーなど“所有の時代”を支えてきた企業も対応を強化しており、各社の動向に関心が高まっています。
所有せずに自動車を利用するサービスの代表格がレンタカーです。2019年3月末にレンタカーとして登録されている、いわゆる「わ」「れ」ナンバーの車両台数は約88万4千台となり、1年で約1割増加しました。この中にはカーシェア用の車両も含まれており、増加を後押ししています。交通エコロジー・モビリティ財団による19年3月の調査では、カーシェア用の車両数は右肩上がりで伸びており、前年比で約2割増となる約3万5千台でした。
最近は、自動車メーカーや系列ディーラーによるカーシェアへの取り組みも盛んです。ホンダが17年11月にカーシェアサービス「エブリ・ゴー」をスタートしたのを皮切りに他のメーカーでも独自のカーシェアを立ち上げています。特に足元では各地のトヨタ系ディーラーによる「トヨタシェア」のステーション開設が目立ちます。
また、所有と利用の中間に位置するといわれるサブスクリプション(定額利用)型のサービスも注目され始めました。国内メーカーだけでなく、各インポーターも月々定額料金で自動車を利用できる商品を投入し、ユーザー層の裾野を広げようとしています。
自動車産業が大きな転換期を迎える中、「所有」から「利用」への対応は欠かせません。自動車を活用した新たなビジネスを模索する動きは、業界内外を問わずさらに活発化していくものとみられています。
※日刊自動車新聞2020年(令和2年)6月4日号より