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よくわかる自動車業界

連載「採用戦線’24 自動車メーカー」(下)組織風土を変えよ もの言える風土あってこそ

自動車業界で不正が相次いでいる。2022年の日野自動車以降、ダイハツ工業、豊田自動織機などで認証不正が発覚した。「エリート主義」「昭和の働き方が残っている」「自己中心的な組織風土」―各社の第三者委員会がまとめた報告書には、辛辣な組織批判が列挙されている。ただでさえ「自動車業界を志望する学生が減っている」(いすゞ自動車)状況だ。第三者委の指摘を他山の石とし、歴史を重んじながらも時代にあった企業風土を醸成していくことで、若手人材を呼び込む逆転の発想も求められる。

不正により、学生からの印象は変わっているのか。日刊自動車新聞が四輪・二輪メーカー14社を対象に実施した採用アンケートで、日野自動車は「応募数や内定承諾率などから企業イメージの悪化、志望度が落ちてしまったと痛感している」と反省する。UDトラックスも、高校卒や専門学校卒で「一部の先生や保護者から業界への印象は厳しくなっている印象だ」と答え「従来以上に丁寧な(会社概要や仕事内容、組織風土などの)説明が必要だ」と指摘した。「学生からの印象に目に見えた変化はない」(ヤマハ発動機)、「学生から特に不正に関する質問はあがっていない」(三菱ふそうトラック・バス)との回答もあった。

不正の要因はさまざまだが「上にものが言えない」「コミュニケーション不足」といった組織風土面の指摘はほぼ共通する。日野は「(部門の)セクショナリズムや序列意識の強さ」「事なかれ主義、内向きな風土」、ダイハツでは「開発部門の組織風土の問題」などが挙げられた。過去、燃費不正があった三菱自動車、完成検査問題があった日産自動車やスバル、スズキも同様の背景が不正へとつながっている。

今や、入社3年以内で離職する若手人材の割合は3割以上と言われている。少子化で採用活動が厳しくなる中、風通しが悪く、不正を放置するような職場は、ますます働き手から見放されていくだろう。各社は若手を含め、従業員全員が働きやすい環境の整備に力を入れている。

ダイハツは2月に再発防止策を公表。経営層や管理職含め全社員への意識改革を急ぐ中で、若手社員向けには意見が言いやすい職場を目指し、心理的安全性の研修を実施しているという。

日野の「経営情報共有会」

日野は、アンケート調査に「変わるチャンスととらえてくれる学生も一部で存在する」と回答した。経営層からの情報発信の機会を増やしたり、部門をまたいた「対話会」の実施、上司と部下が定期的に行う面談などを通じ、社員同士が意見を共有する場を広げている。

コミュニケーションの活発化では「半期に3度の目標面談」(スズキ)、「若手社員と経営層との座談会の開催」(ヤマハ発動機)、「年4回の上長との面談、年1回のキャリア面談」(カワサキモータース)など、上司と部下が直接話す機会を設けることで、仕事への課題ややりがいなどを引き出し、社員の成長につなげている。

トヨタ自動車は、若年層を対象に定期的な調査を実施して「『働きにくさ』のアラート(警告)が出ている際は個別にアプローチする」といった体制を整え、若手社員のサポート体制を充実させている。

マツダの竹内都美子執行役員は「従業員一人ひとりが活躍し、職場で多様な意見を発信できる土壌づくりで、組織風土改革を大切にしている。日々、直面する困難を上司に打ち明けられるし、自分のアイデアを共有することにもつながる」と語る。従業員が活発に意見を言い合い、課題を共有して解決に取り組む風土があってこそ、良い人材を呼び込み、最終的には良いクルマづくりにもつながると言えよう。

(この連載は藤原稔里が担当しました)

※日刊自動車新聞2024年(令和6年)4月19日号より