昨年4月にスタートした「特定整備」制度で、目玉となる先進運転支援システム(ADAS)搭載車のエーミング(機能調整)作業を実施するための「電子制御装置整備」認証の取得者数が伸び悩んでいる。2月末までの自動運行装置、運行補助装置を合わせた取得者数は6065件で、日本自動車整備振興会連合会(日整連、竹林武一会長)の会員数約9万社に対して1割にも満たない。

電子制御装置整備認証の取得者数の推移

■コロナ禍が影響

認証取得の妨げになったのが昨春以来、猛威を振るう新型コロナウイルスだ。制度が開始した1週間後には緊急事態宣言が発令され、全国各地で電子制御装置整備認証の取得に必要な整備主任者の資格講習が相次いで中止となったり、延期を余儀なくされた。緊急事態宣言解除後に徐々に再開されたものの、〝3密〟を避ける対応から参加人数を制限せざるを得ない状況が続く。

電子制御装置整備認証の整備主任者になるためには1級自動車整備士または、2級自動車整備士、自動車車体整備士、自動車電気装置整備士が資格講習を受講する必要がある。現実的に1級自動車整備士が在籍している整備事業者は少なく、その場合は講習への参加が不可欠になる。

国土交通省自動車局整備課では「2月だけで取得者数が1200件近くに到達し、今後の増加を考えると順調な推移だ」(佐橋真人整備課長)と分析する。講習は学科、実習、試問の3部門で構成される。このうち特に実習は一度に受講できる人数が限られるため、相応の時間が必要だ。さらに、3年後の2024年を控えて未取得者が一斉に動き始める可能性があるだけに、早期の取り組みが求められる。

遅れを挽回する動きも出ている。神奈川県自動車整備振興会は4月から、振興会4施設での実施に加え、ディーラーのサービス工場などに出向いて販社単位などでも行うなど、支援を強化する。今後は全国各地での開催が積極化する見通しだ。

■対象車の増加が先か

伸び悩むもう1つの要因が事業者ごとに異なる特定整備に対する意識の差だ。エーミングや電子的な整備に積極的な事業者が多い半面、「実際に自社でADAS搭載車を手掛けるのはまだ先と考える整備事業者は少なくないのでは」(日整連・木場宣行専務理事)とみる。

現在は、車検や点検の実施項目の中にエーミングが対象作業に入っていない。多くの分解整備事業者にとってバンパーやグリルの脱着作業を実施する機会は少なく、電子制御装置整備に取り組む意欲は低くなりがちだ。

特定整備の対象車も現時点では多くないのが実情。衝突被害軽減ブレーキ装着車は普及しているが、保安基準が策定される以前の車種は対象外になる場合もある。新型車やモデルチェンジのタイミングで増えてきた経緯はあるものの、ベストセラーとなるトヨタ自動車「プリウス」、日産自動車「ノート」、ホンダ「N―BOX(エヌボックス)」も、対象となったのは昨年のニューモデル発売後だ。保有ベースでみると、対象車はごくわずかといえる。

対象車の入庫が増えてから準備するのでは遅いという側面がある。準備期間として設けられた経過措置をどう活用するかが今後を左右することにもなりそうだ。