2020年4月1日に道路運送車両法が改正され、新たに「特定整備」制度がスタートした。同時に、先進運転支援システム(ADAS)搭載車のエーミング(機能調整)作業を行う新たな認証資格「電子制御装置整備」が導入された。背景にあるのが自動車業界の技術革新の目覚ましさ。今後もADAS搭載車の販売台数拡大が確実な中で、国内の整備事業者への対応を促していく。道路運送車両法の大幅改正は1995年以来約四半世紀振りで、各事業者に新たな設備投資をはじめ新たな対応を求められることになった。しかし、特定整備や電子制御装置整備への認識は事業者ごとに温度差が大きいのが実情だ。
ここ数年、自動車メーカーの先進運転支援技術の進化は早く、ADAS搭載車が増え続けている。衝突被害軽減ブレーキの装着義務化を控え、今後も普及スピードが加速することは確実だ。特定整備導入は時代の流れに即応したといえる。
その中で、カメラやセンサーが装着されたバンパーやグリル、フロントガラスを脱着した場合にエーミングが必要となる。これにより、分解整備工場、車体整備工場、ガラス販売店、カー用品店など幅広い事業者が対応を求められている。
■商機を見いだす
エーミングを積極的に実施しているのが日本技能研修機構(JATTO、石下貴大代表理事)だ。全国各地で「エーミングセンター」を500カ所開設する目標を掲げる。会員相互で情報を共有し、地域相場と連動した料金体系を設定する。周辺事業者からの入庫を受け入れ、エーミング作業台数を増やしていく。
JATTOが設立されたのは20年2月で、立ち上がりから1年余りで会員数は120社を突破した。協賛会員には機械工具商社や部品メーカーらが名を連ね、整備業界内での注目度は高い。
エーミング作業は車両の前方にターゲットを設置し、車両を正確に正対させた状態でスキャンツールを操作してカメラやレーダーの機能調整を行う。手法や作業手順にある程度ノウハウは必要であるものの、熟練したスタッフだとそれほどの時間は不要だ。このため、ガラス事業者大手のカーグラス・jp(さいたま市北区)では「当社では新人を含めてほぼ全社員がエーミング作業を手掛けることができる。大事なのは慣れだ」(田中聡社長)と話す。
■作業対象車数が影響
とはいえ、同認証を取得した多くの事業者でも現実的にエーミングの作業量は増えていない。「昨夏以降の期間でエーミングの作業量は8~9件。全て板金作業を外注した車両が戻ってきた場合のみ」(東京都内の整備事業者)と話す。特定整備の対象車種の少なさも相まって、認証を取得した多くの事業者でも同様の状況が続く。
特定整備では24年3月までの猶予期間が設けられている。20年3月までにエーミング実績があれば経過措置の対象となり、認証を取得しなくても従来通りの作業を実施できる。
バンパーやグリル脱着を頻繁に実施し、日常業務にエーミングが不可欠な車体整備事業者ですら取得者数は少ない。「結果として猶予期間の存在が取得者数の伸び悩みにつながった可能性がある」(日本自動車車体整備協同組合連合会・小倉龍一会長)と見る向きもある。