地球温暖化対策に関する国際的な枠組み「パリ協定」の運用が昨年から本格的に始まりました。同協定は、今世紀後半に温室効果ガスの排出量と吸収量のバランスを取るという長期目標を掲げました。森林やさまざまな技術を用いて排出した分と同量の温室効果ガスを吸収し、排出量を〝実質ゼロ〟にするカーボンニュートラルを目指します。世界各国では、コロナ禍で落ち込んだ経済を立て直す原動力として、カーボンニュートラルなどのグリーン化を政策に組み込む動きが出てきました。
2050年のカーボンニュートラルをいち早く表明したのが欧州です。「欧州グリーンディール」で温室効果ガスの排出ゼロ目標を定めました。米国はトランプ前政権がパリ協定を離脱しましたが、バイデン新大統領が復帰文書に署名し、国際協調を図る姿勢を示しました。日本は菅義偉首相が、50年に温室効果ガス排出の実質ゼロを宣言。こうして世界的に脱炭素の流れが本格化しました。
自動車業界にもカーボンニュートラルの波が押し寄せています。政府は昨年12月にグリーン成長戦略を策定。自動車分野では30年代半ばまでに軽自動車を含む乗用車すべての新車販売を電動車のみにするとしました。
これを受けて自動車メーカーは電動化を加速。トヨタ自動車が25年頃に電動車の年販を550万台以上に増やすほか、日産自動車が30年代前半から主要市場に投入する車両のすべてを電動車にすること、三菱自動車が30年に世界販売の電動車比率を50%に引き上げることをそれぞれ表明しました。
カーボンニュートラルは、単に車両を電動化するだけでは実現できません。製造時から走行時、廃棄に至るまで車のライフサイクル全体で二酸化炭素(CO2)の排出量を減らすことが大切です。火力発電の比率が高い日本では、太陽光など再生可能エネルギー由来の電力コストを低減し導入拡大につなげる施策が重要になります。
※日刊自動車新聞2021年(令和3年)4月20日号より