自動車産業は今、自動運転や電動化といった技術革新によって大きな変革期にあります。さらには世界的な新型コロナウイルス感染拡大が、日本はもちろん世界の基幹産業として発展し続けてきた自動車産業にも大きな影響を及ぼしました。ユーザー意識も変化し、自動車業界は産業構造や流通のあり方など、事業形態の見直しも迫られています。こうした中で、今年度も自動車業界に多くの新入社員が仲間入りしました。日刊自動車新聞ではこれに合わせ、キーワードごとに自動車業界を分かりやすく解説する恒例企画「新人歓迎 自動車業界入門」をスタートします。新入社員はもちろん、多くの読者のご参考になれば幸いです。
新型コロナウイルスの感染拡大は、自動車産業に甚大な影響を及ぼしました。世界規模でビジネスを展開する自動車メーカーは各地で車両の生産停止や減産を余儀なくされ、販売も大きく落ち込みました。ただ、足元ではコロナ影響からは持ち直し、力強い回復を見せています。
国内の乗用車メーカー8社の世界生産は、コロナ禍が大きく影響した2020年4~9月の実績が前年同期より約3割減少しました。国や地域によって感染の影響はばらつきがありますが、世界最大級の自動車マーケットである中国や米国の需要回復スピードが早く、トヨタ自動車やホンダなどの日系メーカーも販売の勢いを取り戻しています。
日本の自動車産業は、完成車メーカーのみならず、大小多くの部品製造、自動車販売、トラックやバスなどの輸送業界まですそ野が広く、多くの雇用を抱える日本の基幹産業と言われています。コロナ禍では業界団体が一丸となり、医療現場への支援などによる感染危機からの克服と、生産活動のいち早い回復による経済復興で〝国難〟に立ち向おうとする強い姿勢を示しました。
新型コロナの世界的な感染拡大によって人々の生活習慣は一変し、移動ニーズにも変化が及んでいます。こうした中、プライベートな空間が確保できるマイカーの価値が改めて見直されています。従来のように店舗で新車を購入するのではなく、インターネットで申し込みが可能な定額利用サービス「サブスクリプション」も広がっています。一方で、不特定多数が乗り合うバスやインバウンド需要の激減でレンタカーなどは大きく落ち込んでいます。
新型コロナの感染影響は変異株の発生もあって先行きは不透明です。同時に技術革新が目まぐるしい自動車産業では、異業種の参入もあって競争は激しくなっています。コロナ後を見据え、競争と協調はますます加速していきそうです。
※日刊自動車新聞2021年(令和3年)4月19日号より