ヤマハ発動機の日髙祥博社長は11月10日、東京理科大学葛飾キャンパス(東京都葛飾区)で「『モノづくりの喜び』を原動力に、人と社会の幸せを描く~ゲンバ発自由闊達な企業風土~」をテーマに、同社の成り立ちやものづくりの楽しさについて講演した。日髙社長は「『これだけは負けたくない』というコア技術の掛け合わせで感動を生み出す製品を作り、チャレンジで獲得したリソースを次の製品につなげる。イノベーションとスピンアウトを繰り返してきた」と同社の歴史を熱く語った。
日髙社長に加え、若手社員として、技術・研究本部AM開発統括部の山﨑美希さんと同本部技術開発統括部の篠原功次さんも登壇した。山﨑さんは、NHKの技術開発番組に挑戦したときの裏話を披露し、ヤマハ発のチーム力の強さを語った。篠原さんは「ジャパンモビリティショー2023」に展示した「モトロイド2」の開発苦労話や達成感などを披露した。
学生とのやり取りは以下の通り。
―電気自動車(EV)シフトをどのように考えているか
日髙社長「一生懸命、EV開発をやっている。当社は(二輪車の)50ccクラスの小さなエンジンから、船外機の大きなサイズまで幅広く手がけている。電動化に向いているのは小さいエンジンサイズなので、ここは(EVで)カバーできると思うが、船外機は(大容量の)電池を積むと沈んでしまう。なので燃料電池(FC)の方が向いている。電動化やFC、内燃機関を活用したカーボンニュートラル(温室効果ガス排出実質ゼロ)燃料など、さまざまな方法を研究開発している」
―ヤマハ発は独創性が強みだと感じたが、社内の雰囲気は
篠原さん「モトロイド2では、初代からどう進化させていくかを考えた時、顧客にとって新たなこと、他社に真似できないことをやりたいと思っており、企画段階から(メンバーから)たくさんのアイデアが出た。『既定路線で行けばいいんじゃない?』という人は誰一人としていなかった。(そういう雰囲気が)今回の開発にも役立ったと思う」
山﨑さん「新しいものを開発する時、単純に他に勝てるものではなく、『ヤマハ発動機ってちょっとおかしいな』と思うことをやりたい。こうした風土やエンジニアのメンタリティーはあると感じる」
日髙社長「経営者として『世の中にないものをやりたい』という姿勢は応援している。私も、先輩や上司に好き勝手やらせてもらった。ただ、使ったものは回収してほしいなあという思いもある(笑)。回収してくれる人がほとんどだが」
―他社とヤマハ発がつくる二輪車の違いは
日髙社長「テストコースで他社の二輪車も乗るが、どれも乗りやすくて欲しいと思うし、差は分からない(笑)。手前味噌だが、当社はデザインとハンドリング(が特徴)だと言われている。あとはシート高が他社よりも高くて、女性ユーザーの選択肢にはまず入らないとか…低くするように言っているが、一向に言うことを聞かない(笑)。だから倒れないバイクを研究開発してもらっている」
―今までツーリングして良かった場所は
日髙社長「シドニーに出張に行った時だ。海岸線を走りながら山の方に行って1時間くらい走った。素晴らしい景色で気持ち良かった」
※日刊自動車新聞2023年(令和5年)12月20日号より