マツダの中山雅デザイン本部長は12月12日、東京都立大学日野キャンパス(東京都日野市)で「社会におけるパーパスをデザインから考える いきいきとする体験をお届けしたい」をテーマに講演した。
中山本部長は、マツダ初のデザイナー出身の開発主査として4代目「ロードスター」の開発に携わった。デザイナーの役割や仕事への向き合い方などを披露したほか、4代目ロードスターが発売されるまでの過程をデザイナー目線で明かした。
マツダは「ジャパンモビリティショー2023」でコンセプトモデル「アイコニックSP」を披露した。講演では、デザインのもとになったモデルを紹介し、学生の注目を集めた。中山本部長は「理屈ではどうにもできない。直観で良いと思ったことをデザインにした」と、コンセプトカーに対する思いを語った。
曲線を多用するアイコニックSPは生産の難易度が高い。ただ、マツダのエンジニアの間では「曲げれんもんでも、わしらが曲げちゃる」という言葉があるという。エンジニアとデザイナーが共通のパーパスを持つことで、難しいデザインも量産にこぎ着けている。
中山本部長は自身を振り返り「『サバンナ RX―7』がマツダのデザイナーになるきっかけとなった」と話した。子供のころに見たカタログのデザインが印象的だったという。
講演ではまた、中山本部長自ら車を横から見たスケッチの様子を実演してみせた。マツダのトップデザイナーの実演に学生らは高い関心を寄せていた。
学生とのやりとりは次の通り。
―コンセプトカーのデザインが特徴的だ
「上から見て美しく見えるように作った。例えば、海の生き物をみると、滑らかな印象がある。誰もが見て美しい形を意識した」
―コンセプトカーのホイールへのこだわりは
「まず一つはスポークの先細りだ。トルクがかかるものは、力がかかる。『先細らせた方が良い』と、こういった部品を開発するエンジニアに言われたことがあった。言われてみると、確かに『フェラーリ』も先細っている。モノの形には理由があるということだ」
―デザイナーとエンジニアの関係は
「例え話になるが、どちらが勝った負けたとよく言われる。デザイナーが要望をすると、エンジニアが『こんなのやってやれるか』と言う。このような関係性のうちは良いものも生まれないと考える。エンジニアとデザイナーの世界では、どちらかが勝った負けたの勝負をするべきではない。『良いものをつくる共通のパーパス』に向かって仕事をすることが大事だ。2つ目は、よく言われることとして、エンジニアの家族を連れてディーラーに行った際、自分のつくった車を見ながら家族に『この車は、デザイナーに勝ったからつくれたんだ』と言ったらどう思うだろうかということ。むしろ『デザイナーが考えたことを実現した』と言ったほうがその家族もうれしく感じると思う。(エンジニア、デザイナー双方がもつ共通の)パーパスをいかに実現できたかにかかってくる」
=連載おわり=
※日刊自動車新聞2023年(令和5年)12月26日号より