ホンダの青山真二副社長は、早稲田大学の国際会議場井深大記念ホール(東京都新宿区)で「大変革期にあるモビリティ業界の面白さ~新たな技術で社会にインパクトを与えよう~」をテーマに講演した。米国排ガス規制「マスキー法」にホンダが世界で初めて適合した歴史を振り返るとともに、「当時と同様、今、目の前に自らの価値を高めて社会に大きなインパクトを与えるチャンスがある」と述べ、モビリティの進化をけん引する考えを示した。
青山副社長は、交通事故ゼロや地球環境への負荷軽減を目指すために取り組むポイントについて説明。パワートレインの電動化や資源循環、エネルギーマネジメント、自動運転/運転支援、コネクテッドの5点を重点領域とし、「その課題を実現するために人や社会に役に立つ技術やアイデアが必要になる」と話した。
具体的な取り組みについては、電動事業開発本部BEVセンターの四竈真人ソフトウェアデファインドモビリティ開発統括部長や小栗浩輔BEV開発完成車開発統括部長が説明した。青山副社長、四竃統括部長、小栗統括部長の3人はパネルディスカッションも行い、モビリティ業界が社会に与える影響力や働くことを通じて成長する仕事の面白さなどについての考えを伝えた。
青山副社長、四竃統括部長、小栗統括部長と学生の主なやり取りは以下の通り。
―内燃機関を積んだクルマやバイクが好きなのだが、ホンダの内燃機関に希望を持っていても良いか
青山副社長「オフィシャルの回答としては、2040年までに四輪車は電気自動車(EV)もしくは燃料電池車(FCV)にする。スピードは異なるが、二輪車も同じ方向で進んでいく。とはいえ、なかなか先が分からない時代というのも事実。オプションはある程度維持しておくことも必要だと思う。一方、本質的には内燃機関であろうが、バッテリーであろうが大きな差はないと考えている。むしろ、エネルギーで(クルマと社会が)広くつながっていくということが進化の方向性だ」
四竃統括部長「ぜひEVにも乗ってみてほしい。かなり魅力的ですよ(笑)」
青山副社長「他社のクルマになるが、スポーツタイプのEVに乗ってみてもらえると分かるけど、ジェットコースターで急降下する時よりも、やばい(笑)。EVの加速の性能は異次元だ」
―コネクテッドの機能が高度化するにつれて個人情報保護の問題が出てくるが、ホンダの考え方は
四竃統括部長「非常に重要な問題。欧州もそうだが、今は米国も日本も中国もそう。個人情報を車内で管理するか、車外で管理するか、いろいろと最適な方法を考えている。また個人情報だけではなく、サイバーセキュリティーも脅威になる」
―他の自動車メーカーと比べて、負けていないことと、これから頑張らなければいけないことは
小栗統括部長「絶対に負けていないこと、それはエンジンでしょ(笑)。チャンピオンドライバーに『GP2エンジン』といわれた所から始まったF1第4期だが、そこから短期間で優勝まで至ったのは自社のことながらすごい。一方、負けているのはEV…という認識のもと、この2年間でものすごくいろいろなことをやってきた。研究開発などの仕込みの結果が出てくるのは5、6年後になる。5年後に『EVは他社に絶対に負けていない』と言えるようになっているかどうか、自分自身も楽しみにしている」
四竃統括部長「エンジンが勝っているというのは全く同じ意見。ただ、製品としてだけではなくエンジンをやっていた人間がいて、そうした人材が縦横無尽に動ける環境があることがホンダの強みだ」
※日刊自動車新聞2023年(令和5年)12月6日号より