いすゞ自動車は10月20日、東京工業大学の大岡山キャンパス(東京都目黒区)で開発部門の津山浩一バイスプレジデント(VP)が「運ぶを支える先進技術」をテーマに講演した。

津山VPは、トラックやバスなどの商用車について「人々の生活を支える上で重要な役割を担っている。コロナ禍でeコマース(電子商取引)が増え、輸送量も増加している。運転手不足で、輸送効率も落ちている。効率良く輸送することや、運転手の負担軽減といったことがニーズとして上がっている。荷物が運べなくなれば、大きな社会的ダメージがある」と語った。

2024年問題に危機感を示した津山VP

この上で、商用車メーカーとして取り組むべきことを「故障しないような車両の開発や、故障しても(影響を)最小限に抑えられる、すぐに修理対応できるといったことが求められる」と例示し、商用車の電動化や自動運転、脱炭素に向けた取り組みなども紹介した。

学生との主なやり取りは次の通り。

―トラックは車型によって積載量が異なる。センシングでは積載量を考慮することになるのか

「センシングはあまり変わらない。車の大きさが変われば、センサーの取り付け位置が異なってくる。できるだけ同じ範囲をみるという観点では小型も大型も変わらない」

―高速道路での無人運転の実現はいつ頃を想定しているか

「(説明では)市街地に比べ、高速道路の自動運転の方が簡単そうに聞こえたかもしれないが、そうではない。(一般には)2028年、あるいは30年以降と言われているが難しいと思う。車だけで対応できる部分もあるが、法令や周囲の環境など、三位一体でやっていく必要がある。正直、はっきりとは言えない状況だ。(2024年問題もあるが、)車両自体の自動運転化で来年、再来年に課題を解決するのは難しい」

商用車のパワートレインも多様化が進む

―自動運転でトラックの形が変わる可能性は

「トラックで言えば、車両全体に荷物が積めることになるため、キャビン(車室)は必要なくなる。ただ、私たちも想像はするが、実用化する勇気がない。欧州の一部トラックメーカーでは、プロトタイプモデルを発表している事例もある」

―商用車のプラグインハイブリッド車(PHV)の可能性は

「あると思っている。ただ、内燃機関を残す形にはなる。すでに『エルフ』のラインアップにストロングハイブリッド車(HV)を持っている。カーボンニュートラル(温室効果ガス排出実質ゼロ)化していく上のポジショニングとしてはある。ただ、まず小型は電気自動車(EV)で走らせていくことになる」

―いすゞは、水素の製造などは考えているか

「エネルギーをつくる、特に電気をつくることは考えていない。ただ、より研究を進めていかなければならないと考えている燃料は、eフューエル(合成燃料)だ。内燃機関の可能性として考えている。すでにあるインフラを活用できる点を考慮すると、eフューエルは少し踏み込んでやっていく必要がある」

―商用車を主力にしている会社がピックアップトラックに取り組む理由は

「ラインアップにピックアップを持っている理由は『荷物を運ぶ行為は変わらないと』いうことが大きい。最新の乗用車をつくっていることで、乗用車のトレンドや技術、法令などがトラックに展開されていくこともある」